小説の部屋


トップページへ戻る 

2000年
第一話  『 一期一会 』 '00.10

第二話  『 危険なオフィス・ラブ 』 '00.11
 
第三話  『 スリルな DECENBER 』 '00.12


2001年
第四話  祝 21世紀 特別企画 『 温泉一泊 暗黙のオフ会 』 '01.6
       
     ※ 主演・出演者希望多数の為、HNはすべて架空の名を作らせて頂きます。
                 お好きな人物にすりかえて、お楽しみ下さい(笑)

     
第五話
  
『人妻パート通勤電車物語』 '01.12


2002年
第六話   『ネット恋愛の始まり・・・そして。。。』 '02.11.1

         
2003年

第七話   『気持ちいいですか?奥さん。。。』 完結しました! ’04.3.01
                                         


 第一話  『 一期一会 

 朝の陽射しに誘われてレースのカーテンと窓を開けると 心地よい冷たさと朝露の匂いが体を包むようにちかずいてきた。
白青い空を見上げ何も考える余裕もなく両手を広げてあくびをした。
ふと、右斜め下の路地に目を向けるとサラリーマン風の男と目が合い、慌てて手を口に持っていったが、もう遅かったようだ。
男は少し笑ったようにも見え、軽くお辞儀をして駅の方へ向かっていった。
・・・・・誰だろう、知ってる人かな・・・・・
そんなことを思いつつキッチンへいき、コーヒーメーカーのスイッチとテレビをつけ、流れてくるニュースを耳にしながら昨夜の出来事を思い出すかのように目を閉じて、またベットへ横たわった・・・。

 昨夜主人は出張で帰ってこなかった。
子供のいない麻子にとって絶好のチャンス。
大学からの親友 紗枝と共に夜の街へ向かっていった。
軽くレストランで食事をした後 お酒と音楽の似合う店・・・・・KENTOS・・・へ

薄暗い店内は生演奏のライトアップ
グループやカップルで賑わう中、女が二人だけで来るのは淋しい限りと思いながら 
音楽の心地よさがそれを後ろへ遠避けたのだった。

グラスの冷たさに手が拒み、そっと手のひらを頬に添え 壁の間接照明に目を移したとき
  「こんばんは、ここ・・・初めて?」
不意にかけられた言葉に戸惑っていると
  「よかったらご一緒しませんか、僕達も3人きりなんですよ」

常連なんだろうか、ボーイに声をかけ男達は答えも聞かずグラスを手に席を立って移ってきてしまった。
  「ごめんね、驚いた? だって皆で飲んだほうが楽しいでしょ。 あ・・・やっぱりいけなかったかなー」
なんて馴れ馴れしいやつなんだ、と思いながら 声をかけられる心地よさが強く拒否をすることをためらってしまった・・・。

  「僕達ね、よくここに来るんだけど、あんまり見ないよね。」
にこにこして良いものか、失礼な奴と言う顔をすればいいのか
麻子と紗枝は少し笑って顔を見合わせ黙っていた。
麻子の右横に座った男は話し好きのようだ。紗枝の隣りの男は無口だがじっと見る目がなにかを語っている
一番顔が見える席についた向かえ側の男はニヤニヤしながら品定めをしている感じでいやらしかった。

  「ぼく、川本と言いますヨロシク」
麻子の横の男が素早く名刺を差し出した。それに吊られるように二人の男も慌ててポケットから出した。
紗枝の横の男は<太田>向こう側が<佐々木> それぞれ会社が違っていた。

  「結婚してるの?」
聞かれてどうした物かと思いつつ
  「はい・・・私達人妻ですよ」 紗枝が答えた。
  「ほー・・・人妻ねぇ…いい響だなー、で・・・今夜ご主人は?」
そんなこといいじゃない・・・いい気持で飲んでるのに 旦那のこと思い出させないでよ・・・。
  「今夜は遊ぶんです。独身のつもりで」
つい出てしまった言葉・・・。いいのかな・・・。                           
  「遊ぶんですか  どんなことして?その仲間に入らせてもらってもかまわないかなー」
  「いいえ…ダメですよ。もう予定は決まってるんです。」
予定?紗枝ったら何を言い出すんだろう…なに考えてるのかしら…
  「そうか…入れてもらえないんじゃー仕方ないか…」
  「でも…」
  「ん?…でも・・  なんですか?」
  「あの…ねぇ? 麻子」
言葉を求められた麻子はとっさに考えた
  「うん、後から彼が迎えに来るし、予定もあるから」
  「彼?旦那じゃなくて?」
  「あ…旦那です…」
  「ははは…いいよごまかさなくたって、そんなに警戒しないでよ 僕達そんな悪い人間じゃないからさぁ」
 なんだか見透かされているようでこれ以上のいい訳は通用する感じではなく、麻子も紗枝ももう話しの輪に入り込むしかなかった。
 
ざわめきの中の耳打ち…
ジョークの中の本気…
賑やかさの中のささやき…
ダンスと音楽の心地よさ…
危険な心理…

どれぐらい時間が経ったんだろう・・・もうそろそろ帰らないと・・・ 

 「送ってくよ。」
その言葉が何なのか…わかってる、わかっているからどうしたら…。
 「ありがとう、じゃー ねぇ 麻子 送ってもらおうよ、お言葉に甘えてさ」
紗枝の屈託のない返事にあきれながらも ちょっと冒険心が沸いてきた麻子。
 「僕の車二人乗りなんだ、だから…君は…。」
 「ああ 私はかーれと!いいよね、送ってね!」
紗枝は太田に甘えるように寄り添っている
麻子は川本の車に乗り込んだ…ちょっと危険を感じながら。
 「えっと…僕は車置いてきたから…あ…およびでない…はいはい」
佐々木のひょうきんさが自分を救っているように思えた。
そして車は夜更けの街を人目から逃げるように遠避けて走って行った。。。


賑やかな街並みから15分もすると、もうそこは二人だけのシーン

会話の内の心理・・・
沈黙の内の同意・・・
建前の内の本音・・・
拒否の内の誘導・・・

  「いいよね…入るよ」
  「…えっ、待って!…私は…わたしは…」
車は川本の心を察したかのように滑るようにタイヤを回転させ
一つの扉へと吸い込まれていった…。


  「素敵だ…綺麗だ…」
耳元へささやきかけながらその手は麻子の背中を巻きこむように
しっかりと抱きかかえながら 首筋 耳 喉もと そして唇へキスの抱擁
よじれる体を離さないように…
  「いゃ。。。あぁ。。」
薄明かりのなかで麻子は幻想の世界へ導かれる
少しずつ 少しずつ麻子の衣服が下位に落ちていく
纏わりの無い白い肌・・・

 なんの言葉も見当たらない
この先の出来事が本当に続くのか…それともこれは・・・


体が揺れる 力が抜ける しなだれかかる・・・
軽く抱えられそのままベッドへ倒れこむ・・・
もう そこは大人の知り尽くした世界
なんの抵抗も なんのわだかまりも捨ててしまった男と女の世界
手も指も唇も全てが快感の小道具…全てが性欲の対象・・・
  「あぁ…ぁ…」
小さく漏れる 言葉とは言えない言葉…
耳への吐息 ささやき kiss…男の指が背中を伝い、その跡を唇と舌が追う。
その指は柔らかく湿った神秘の入り口へと向かっていく

しっとりと濡れたそこは熱く情熱を放っていた
麻子は目を閉じて 次ぎに来る行為を予想しながら深く陶酔の世界へ入っていく
はぁ。。。これは夢? これは現実? これは幻?。。。
酔っているとはいえ、拒否できない酔いではなかった・・。
酔ったフリするほど余裕もなかった・・。
でも、ここへ来てしまった。。

 「こんなに濡れて・・・」
男の言葉が恥かしさと快感を誘う。。

指が触れ、待っていたかのようにそれは反応した
腰が浮き その行為を催促するように近づける
滑らかにそして熱く燃えて…
薄く開いて見た川本の頭が、だんだん下へ降りて行く・・

 「あぁ。。いや…ダメ。。。ダメ。。」
麻子の両手はシーツを握り締めたまま固まっている
愛液が流れ落ちる。。。
女の体を知り尽くしているその行為は 秘密の一期一会とは言いがたいほどの興奮。
何度会っても良いかも もうやめられないかも もうどうなっても…
麻子の体はもだえるように全てを受け入れるには十分過ぎるほど・・
開いた両足の支えは もう必要なかった。。

 「どぉ?   ここ     こうしたら     いい?」
 「あっぁ   んっ   ぃぃ   あぁん      うん。。。はぁ。。。ぁ」
シーツがゆがみ 枕がズレ 小さな明かりが眩しく感じる。
聞こえる音楽も記憶に残らないほど遠くで奏でている。
 「ああん。。。あぁぁ。。!   だめぇ。。。あぁ。。ん。。。!!」
大きな波が体の芯を走る。じっとしていられない沸き上がる痺れのような感覚。
 「ぁぁ。。。イケたねぇ・・・・・よかった   もう一度   」
男の優しい言葉が一層の陶酔を呼ぶ。。
 「僕も我慢できないよ・・・入るよ・・・」
そう言うとお腹から腰 胸 首・・・念入りにKissをしながら顔が近付いて来る。
恥ずかしながら少し微笑んで見詰め合う。。
言葉を塞ぐように唇が重なる・・・それと同時に彼自身がゆっくり・・・それでいて力強く。。。
                                                            
 「! あんっ・・   ああ   ああん。。  !!。。。」
塞がれた唇から思わず洩れる喘ぎ。。。
優しく ゆっくりと 深く押し寄せる 性感の心地よさ
背中にまわされた手が 指が 爪が 快感の表現を物語る・・・。
動物的動きと感覚と官能・・・
 「ああぁ いいよ 凄いよ・・・ああ  君は素敵だ。。」
言葉に操られ 言葉に酔い 言葉を受け入れて 女の体はその気になる・・
恥かしさを忘れ 先の事も考えられず 今のこの瞬間を楽しむ・・・

目を閉じると・・・夢心地 
のけぞると・・・喘ぎ声
波打つ腰は・・・快感の誘い
目を開けると・・・恍惚の顔

何も言わず 何も問わず 聞こえるのは息の荒さと生唾を飲むような喉の音・・
 「付けた方が…いいよね」
渇いた口からやっと出た意味ある言葉。 冷静な態度。
麻子も顔にかかる乱れた髪をそっとかき分けながらうなずく。
様子が見えないまでも、男のはやる動きと気持と仕草が脳裏に浮ぶ。。


いきなり体が離れたと思ったら、やや強引に腰を押してうつ伏せにさせられた。
驚きながらも なすがまま・・。 嫌がる仕草も気をそそる・・・。 強引さを訝りながらも興奮を誘う・・。
 
 「おおぉ!。。。あ    あん〜。。    いやぁぁ。。。」
 「いいよ  いいよぉ  深く入ってるよ・・  どうだい   気持いいかい・・・  」
リズミカルな動きと強弱の波。 男のうめきと女の叫び・・・。
掴まれた腰の手に汗がにじむ。 汗と興奮が部屋の温度を上昇させる。 
もうダメだと首を振る女の背中に男の汗が滴り落ちる。。
 「いいね   イクよ  一緒にイクんだよぉ   いいねぇ。。  」
男の言葉に喘ぎながらうなずく麻子。。
突き上げられたその腰は もう・・・もう感情の動物ではなく本能の肉体そのものだった。
ふんばる腕が肩が膝が痙攣と共に崩れ落ちる・・・
息使いの粗さと 満ち足りた横顔と・・・ 余韻に浸る一夜の出来事。。。


揺れるカーテンの向こうで近所の子供たちの声・・
ふっと我に返ってベットに座りなおす・・
思い出した麻子の下着がしっとり濡れる・・

モーニングコーヒーの前にシャワーを浴びよう。。

鏡に映ったその裸体は 
平凡と言う衣を脱ぎ去る 女の体を覚えこませた肌だった・・・。

                                                   第一話 完 

       
                                                                                               
 第二話   『 危険な オフィス・ラブ 』 
   
 「ねぇ響子、今夜予定ある?」
 「ううん、別に。 彼からも連絡ないから・・・空いてるよ」
 「そっかー、彼氏 最近響子に冷たいんじゃない?」
 「・・・・・忙しいのよここんところ。 暇な会社よりいいわよ」
 「だったらさ、いいお店見付けたのよ。 今夜行こうよ」
 「うん、じゃーこれさっさと片付けて 付き合うわ」

週末をひかえた金曜日の夕暮れ。 とあるビルの一角のオフィス。
響子と絵里は共に24歳。 仕事も私生活も充実した日々を送っていた。
営業マンが次々と帰社する頃、OL達はロッカーで化粧直し。
それぞれの自由時間が始まる。 背中の羽根が 飛び立つ準備に余念がない。

6時も過ぎた頃 社員達の姿もまばらになる。
残っているのは営業報告の書類をまとめる者や休み前に仕事を片付けたいと思う者
そして電話を受けながら 時計を気にして自分の携帯を弄っている者・・・。
それぞれの週末・・・。
                                                       
 「お先に失礼しまーす」
 「おつかれさん、遊びすぎるなよー」
 「今遊ばなくていつ遊ぶんですかー、今夜は飲むぞ〜」
 「絵里ちゃんには叶わないよ、虫も寄り付かないなーそれでは あはは・・」
 「ご心配には及びません、課長のような真面目人間では同じ人生半分しか楽しめませんよー」
 「何言ってるんだ、人の人生勝手に決めるなよ。 まあ、あんまり羽目をハズし過ぎないようにな」
 「はーい、では行ってまいりまーす     響子〜まだぁ〜?行くよーー」
 
課長と絵里の会話を楽しげに聞きながら響子はパソコンの電源を切る。
社内には数人の営業マンとPCを相手に資料作りを続ける課長の笹沢が残っている。

 「響子ちゃーん、どっか行くの〜?」
 「絵里とお食事」
 「絵里ちゃんと行くの? 僕と行った方が楽しいよ♪        課長 お先に失礼します!」

同僚達の親しげな会話は続く。  朝とは明かに違い 退社する足並みは軽い。
                                                          
絵里に誘われるまま地下鉄に向うオフィス街。 すれ違う顔は仕事を終えた安堵と気の緩んだ笑顔の波。
 「ねぇ、響子。 これから行くお店とっても評判らしいよ」
 「どんなふうに?」
 「外観は普通の古いお屋敷風なんだけど、中はちゃんとしたレストラン。知る人ぞ知るって感じ」
 「ふ〜ん、誰かと行った事あるの?」
 「うん・・・ちょっとね。」
 
ふと響子はバックに手を差し入れた。
 「あ・・・携帯がない・・・」
 「ん? 落とした?」
 「違う、会社だ。PCの横に置いたまま忘れてきちゃった。  取って来る」
 「え〜!今から〜? どうするのよ私・・」
 「先行っててもいいよ。○○で下りればいいんでしょ。 着いたら電話するから」
 「うーん、携帯ないと不便だしなー。じゃー先行って席確保しとく」
 
響子はそのまま会社へ戻り、絵里は地下鉄へ。 その時絵里の携帯に電話が・・。
 「もしもし 絵里さん? 本多です。響子の・・・」
 「あら〜、本多さん! どうしたの??」
 「あのー、響子の携帯かけても出ないんですよ。 何か知ってます?」
 「そうそう、たった今会社に携帯忘れて取りに戻ってる所よ。  ねぇねぇ、今から響子と食事に行くところだったの
  一緒に行かない? 響子ビックリさせようよ。 場所教えるから・・・」
 
響子の彼は承知してお店で出会う事になった。 その頃響子は・・・。

社内に入ると人もまばらで 課によっては明かりが消えている所もある。
足早に向う部屋はまだ明かりが点いていた。 そっとドアを開けて辺りを見渡すと、奥の方で人の気配。
響子は自分の席を目指した。

 「あれ?どうしたの?忘れ物?」

その声は課長の笹沢。 一人残ってPCに向っている。

 「課長 まだいらしたのですか? 急ぎの仕事ですか?」
 「うん・・・いろいろね・・・」
 
携帯を手にして着信に気づかないままバックに入れ 机に置いたまま課長の側へ向う響子。
PCを覗きこんで・・
 「書類作りですか・・・何かの統計ですね」
 「会議の為にも過去の記録をまとめて他店との比較表やグラフを作りたいんだが、若い者とは違って今からPCのノウハウやエクセルを使いこなそうと思うと頭が痛いよ」
 「そうですね・・・便利とは言え使うまでには結構時間が掛かりますよね・・」
 「君はわかっていそうだねぇ」
 「わかるといっても基本だけです。自分の仕事の範囲ぐらいしか理解してません」
 「うーん・・・今夜は何時に帰れるやら・・・。 あ、いいよ響子ちゃん、約束があるんだろ?待ってるんじゃないの?」
 「あ・・・はい・・・、でも課長大変そうだし少しぐらいならお手伝いしましょうか・・」
 「彼氏待たせちゃいけないよ」
 「違いますよー、知ってるじゃないですかー。今夜は絵里とです」
 「そうだったかな、そんな話しも聞いたような・・・」
 「課長 完全仕事に入ってますねー。 私でお役に立つなら手伝いますよ。 絵里には電話しておきます」
 「悪いなー、じゃー少しだけ甘えさせてもらおうかな」

軽い気持で引き受けた・・・絵里にもそれとなく遅れる事を伝えた・・・笹沢もこれで順調に仕事が進むと安堵した。
全ては普通に事が進むとそれぞれが思っていた・・・。

 
 「課長、そこはRANKとIF関数を使われた方が・・」
 「表を作るのにそんなややこしい事が必要なのか?」
 「ややこしくないですよ、やってみましょうか」
 「・・・うん・・・やってみてくれ・・」
 
着替えた響子の姿は仕事中とは似付かない容姿だった・・。
席を替わって座ったその時、不自然さもなく腿まで上がったスカートの裾。。
立ち上がった笹沢の目にはジャケットの下のキャミソールの胸元がくっきり見える。
若さが盛りあがる肌の張りと艶と香り・・・一瞬目のやり場を失いながらPCに目を移す。

 「こうです、他店との数値に順番をつけたいときに、RANK関数を付けます。
  =RANK(適合値、適合範囲、順序)
  ここをですねぇ・・・14番地として・・・=RANK(G4,$G$4:$G$11,0)と入力して・・・」

響子の懸命な説明が理解できたのかどうかの判断もままならず・・・  
 「課長?わかります? そしてここ、実績が目標額と同類、又は越えている場合は達成、
   そうでなければ 未達 と表示します。 条件判断を可能にするのは IF関数を使うんです」
 「・・・・・・・・・・・」
 「D4番地に=IF(C4>B4,"達成","未達")と入力・・・・・・・・・・あ・・・・・」
 「ん?」
 「ここに入れる数値・・・・・入力資料ありますか?」
 「うーん・・・資料室だったかなー・・・」
 「探してきます。 行ってきますね」
 「すまんなー」

テキパキと判断しながら動く響子に 笹沢は部下としての満足と女としての魅力を垣間見ている自分が落ち付かなかった。

10分経ち15分経ち・・・なかなか戻らない響子が心配になり笹沢は同じ階の一番奥にある資料室へ足を運んだ。
 「・・・・・どう?まだ見つからない?・・・・・響子ちゃん?・・・」
薄明かりのその部屋は20畳ほどのフロアーでスチール棚やガラス棚が並べられ一角には机も備えられていた。
 
 「あ、すみません課長。どれがどれやら判らなくなってしまって・・・持って行くには重いのでここで・・・」
 「どれどれ・・・見てみよう・・・」
静かだった・・・閉切った窓とドアー・・・薄明かり・・・誰もいない部屋・・・
資料を見つめながら煩悩が騒ぐ・・・
 「課長・・・・・」
 「ん?!・・・どうした・・・」
 「あそこにも気になるファイルが・・・」
そう言って机を離れ側の棚の上段に手を伸ばした・・
 「とどかない・・・」
その手の先を見るよりも、たくし上げられたジャケットの下のキャミ・・・脇・・・仕草・・・いとおしさ・・・。
代わりに取ろうとした笹沢の手は響子の腰を支えていた・・。
ちょっと驚いた響子・・・少し体をよじりながらもその行為を拒否しなかった。
どうとらえたらいいのか判断にも困った。 そのまま少し持ち上げ気味にしている笹沢の行動通り資料を取る事に集中していた。
しかし、それは指先にしか触る事が出来ず、その姿勢のまま笹沢を見た。
目と目は離れなかった。 腰の手も離れなかった。 言葉も見つからなかった。
ゆっくり・・・静かに・・・その腰は笹沢に寄せられて行く・・・。
鼓動が高鳴って来た。 スローモーションのように空気が流れて行く。 不自然な行動が自然に動いている。
正面に向けられた顔は 緊張と紅潮と不安と疑いが走っていた。

響子の両腕はそれ以上の接近を阻むように笹沢の胸に押し当てられ ゆっくり首を横に振った・・。
 「いけません・・・・・いけませんよ・・・」
 「なぜだ・・・何故いけないんだ・・・」
 「何故って・・・ここは会社ですよ・・」
 「会社でなければいいのか・・」
 「・・・だめですよ・・・そんな事おっしゃっては・・・」

引き寄せる男の力・・・押しのけようとする女の力・・・。
響子のそむけた顔を覗きこむように反応を確かめる笹沢・・。
好意が無い訳ではない笹沢の行動に 驚きながら拒否しながら大声までは出せなかった・・。

 「あ・・・か・・・課長・・・だめ・・・だめですよ・・・」
 「・・・・・・・・・い・・・いいんだよ・・・・・」
男の荒い息使い、もう止められない衝動、振りほどけない力・・・
止めて欲しい気持と好奇心の気持。 後が恐いと言う気持と1度きりなら・・・と言う気持。
大声出したらお互いが気まずい。 ひっぱたくのは会社を止める時・・。
様々な思いが脳裏を行き来して中途半端な感情がムクムクと沸き上がって来た。

 「あん・・・課長。。。」
その言葉は笹沢の少なからずの迷いを吹き飛ばした。
響子は吹っ切れたと思った。 覚悟を決めたと。 このままいけると・・。

響子を書類棚にもたれさせ 首筋へKissをしながらジャケットを剥ぐ。
横を向いたうなじに髪がつたい そっとかき分けて耳への抱擁。
 「あぁ・・あ。。」
キャミソールをたくし上げブラの下から手を差し入れて優しく掴む。
激しさと優しさの巧みなテク。。
だんだん力が抜けるような 意識もここには存在しない時間の空間に入り込んでいく・・。
笹沢の手がゆっくり遊覧しながら下がっていく。。

拒みながら重ねた唇は 温かく柔らかく優しく受け入れられた。
笹沢の手はそこへ行くまで急がなかった。
ストッキングの肌触りと腿の温かさを感じながら、閉じられた足の間に割り込むように片足をさし込む。
力の入った響子の足が笹沢の足を閉め付ける。
後ろから延ばした手が お尻の丸みを撫でながら内腿へ伝っていく・・・。

 「あっ・・・・・」
小さな声を漏らしながら、力が抜けていく。
 「響子ちゃん・・・・・響子・・・可愛いよ・・・」
そっと・・・素早く・・・優しく・・・強引に、ストッキンッグを下ろしていく。
肌の温もりを直に感じた淫靡な手は 熱く火照った花弁を少しづつ開花させていく。

不意に響子を抱きかかえると そのまま横の机に上半身を寝かせた。
背中の書類が音を立てて滑り落ちる。
足のかかとが椅子の背もたれにぶつかる。 
片方のパンプスがはじけて転がる。
男は両足の間に入り込み 熱い吐息と共に抱擁のkissを浴びせ掛ける。

唇に うなじに 耳に 喉に・・・まくれあがったブラの下の豊満な乳房に。。。
kissをしながら 指はショーツの上で器用に踊っている。
無防備な響子の下半身は、恐怖と言うより誘いの鼓動に高鳴っていた。
その指が引きずり下ろしたショーツの色はブラとお揃いのブラウンだった。

踊る指先は 蝶の様に軽やかに優雅に 密の味を確かめるよに花弁を遊覧している
優しく強く 攻めたりじらしたり。。
深い泉に滑り込んだ時 今まで押し殺していた声が喘ぎに変わっていった・・
暖かい壁がしっかり指を包んでいる。 弾力と伸縮と滑らかな圧。
天上のざらつきが指に伝わってくる・・・奥に入れば入るほど快楽の迷路が連なっている。
ある一点に辿り付いた時 その喘ぎは今までとは違う全身の震えとなって現れた。

 「ここ?・・・ここが○スポットだね・・・よしよし。。。」
 「あぁん。。。いやぁ〜ん・・・ん・・・・・あぁ・・・。。。」

蝶の舞は心得た様に 三点集中の優雅な舞を繰り広げていく。。
ここが何処なのか 何をしているのか どんな状況なのか考えるすべも無くしていた。
笹沢は攻撃を止める事なく、片手で器用にズボンの中の生き物に化した突起物を解放した。

 「そーら・・・これはどう? こっちの方が美味しいよ・・・」

立場を忘れ 淫乱な言葉が時空を超える。
本能と欲望が自分を捨て去る。
押さえ切らずに飛び出した言葉や行動が、一層の興奮を誘う。

 「ここが・・・・・”未達”・・・・・あぁ・・・・そして・・・・”達成”・・・・・・・・どう?当ってる?」
 「あ・・・あぁ・・・課長・・・・・ぃぃ。。。  ああぁぁ    もっと  あん   もっと。。。」
 「しょうがない子だ。。   もっと言ってごらん   もっと声出してごらん・・・」
 「あん..。。    あ...     ああん......   イク     イキソウ.......」
 「イッテいいよ  イク時言いなさい  大丈夫 私も外へ出すから・・・」
 「!  ああん!  あああぁぁ・・・・イクゥ〜〜」

響子は全身を振るわせながら腰の痙攣と共に力が抜けていく。。
抜けながら 迷路だけは快感が高ぶっている。
それと同時に笹沢も勢いよく響子の腹部で”達成”した。。

荒い息ずかいが部屋に充満している。
すぐに動けない身体が 激しさを物語っている・・・。



 「ねぇ、出ないの?」
 「うん・・・呼び出しはしてるけど・・出ないなー」
 「携帯が見つからないままなのかしら」
後から響子が来るのを待っている絵里と 響子の彼氏の本多。
もう食事はほとんど終わっている。

 「でも、私としては響子ご自慢の彼と食事が出来るなんてラッキーだったなー」
 「自慢?僕の事自慢してるの?」
 「そうよー、いつも聞かせれてるもん。仕事は出来るし優しいし 何でも言う事聞いてくれるし最高だって」
 「あはは・・そうか・・。最高か・・・ふふ」
 「あ〜?何だか怪しい笑い・・・何か隠してる?んん〜?」
 「隠してなんかないさ、・・・」
 「ん? なになに?」
 「あははは・・・絵里ちゃん、何言わせたいんだよー。何でもないよー、まったくぅー。
  うーん、このままここに居てもしょうがないなー・・・どうしよう」
 「うん・・・食べ終わった皿見ててもしょうがないよね。 連絡出来ないならここもわからないし・・・出よか」
 
響子の彼氏におごってもらってご満悦の絵里。 二人の並べる肩は恋人気分。 
二人とも響子への電話はそれきりになっていた・・・。

 「時間はいいの?」
 「うん、大丈夫」
 「飲みに行こうか」
 「うん・・・連れてって。。」
ネオンが眩い繁華街。 時の刻みは人それぞれ。 道ゆく人は知らぬ顔。。


 「何飲む?カクテル?ワイン?」
 「うーん・・カクテルかな・・・」
 「いいよ、好みは・・・ある?」
 「よくわからないけど・・・あまり強くなくて飲みやすければ・・」
 「わかった」
観葉植物に囲まれた中で 深く沈むような赤い光りが浮びあがるガラスのランプ。
見え過ぎず暗過ぎず 近付く顔だけがその人とわからせるカウンター。
静けさの空間に軽いジャズのリズムが溶け込む・・。
 「マスター、薄目でいいから ラムベースで・・・キューバ・リバー。それとジンベースで・・・トムコリンズ」
 「かしこまりました」

不思議な時間である。
ついさっきまで友達の友達・・・そんな関係が当たり前だったのに 今は違う・・
違うと感じながら後ろめたさもチョッピリ。
真直ぐ帰ればいつもと同じ、あのまま帰ればこんな不安定な関係にはならなかったはず・・。
お互いが同じ思いで連れ添って、同じ思いでここに居る。
いや・・・男と女の勘違い。どちらが何を思っているのか心の奥は予想不可能。

会話の中で言葉を選び、笑いの影で想いの検索。
目と目が合って真意を探り、触れる腕が熱を帯びる・・・。

 「なかなかいけるんだね絵里ちゃん」
 「そうでもないわよ、でも・・・これ美味しい。。。」
 「良かった、もう一杯どう?今度は違うものを・・」
 「うーん・・どうしようかなー・・・」
 「マスター、彼女に何か軽く飲めるもの・・」
 「そうですねー、では・・・ワインベースで・・・キール・ワインクーラーか・・・スプリッツァー」
 「任せるよ」
 
カウンターを隔ててリズムを奏でるようにシェイカーが上下する。。
ハンドダンスの妙技が一瞬の気分転換となって顔がほころぶ。
透き通る逆三角形クリスタルグラス。
注がれた薄紅色の甘い香りが ピンクのチェリーを飲みこむように交わっていた。。

何を話すと言う訳でもなく、何が聞きたいという事もなく・・
むやみに聞いてもおかしいし、知った所でその先は・・・。

 「・・・どうした?黙っちゃったね」
 「ふぅ〜・・・気持いいわ。。」
 「そうか・・・さすがに酔ってしまったかな。 大丈夫?絵里ちゃん」
 「うん・・・はぁ〜。。。」
 
意味はなかった・・・出てくる為息は不満の溜息ではない。
満足と・・・言い知れぬ心地よさと・・・そして・・・・・。

 「そろそろ帰らないと」
 「そうだね、10時過ぎちゃったね。 送って行くよ」

カウンターの高い席からから軽く足をつこうとした時、ぐらついた絵里が本多に寄りかかった。
 「おっと・・・やっぱり効いてるなー」
 「あはは、私としたことがこれしきのアルコールに負けるとは・・」
 
ふざけた動作で腕を絡める。 甘えた仕草でもたれ掛かる。それを受ける男の心理。。。

タクシーがひろえる辺りまでゆっくり歩く・・
左肩にもたれ掛かるその姿は何も不安を感じない頼り切った女の暖かさだった。
 「大丈夫?  気持悪くない?  歩ける?」
優しく問いかける本多の腕を より強く抱きかかえる絵里。。
 「悪かったね・・・あんなに飲ませるんじゃなかった・・・」

大通りに差し掛かる前、左の横道を覗くとそれらしき建物の指示ネオン。。
ゆっくりだった歩みを更に緩めて・・・
 「絵里ちゃん・・・・・」
 「・・・・・?」
 「・・・少し休もうか・・・」
 「・・・休む?・・・」
 「このままタクシー乗ったら、もっと気分悪くならない?」
 「・・・・・うん・・・・・そうかも・・・・・」

さも体を支えるように肩を抱かえ、左のネオンへ吸い込まれるように誘導される。。
都心の休憩室・・・レンガ作りのオシャレな外観。
最近のホテル事情なのか、昔ほど暗いイメージではなく 若者でも気軽に遊び感覚で入りやすいような入り口。
ホールも開放的で堂々とソファーまで設えてあり、ここで待ち合わせでもするのか・・・と云うインテリアである。
 
 「ちょっとここで座ってて・・」
トロピカルな絵柄のダブルソファーに体を沈めさせ、本多はカウンター横にある部屋の間取りのボードに近付いた。
5階建てのその建物には約20種類程の部屋が用意され、ボードに映し出された準備OKの表示は5部屋ほどだった。
本多は少しの迷いの後ルームナンバーのボタンを押し、絵里を抱えるように包み込みエレベーターへ向った。
狭い空間で5階を目指すその間、どちらからともなく見詰め合い唇を重ねたその時から もう1つの秘密の時間が作動した・・。

迷路とも思われる曲がりくねった廊下の先に502号室の鈍い光りが誘うように点滅している。
重い鉄の扉を開いた中で 洒落た猫の陶器の置物と真っ赤な薔薇の造花が迎えてくれた。
靴を脱ぐ動作ももどかしく、軽い音楽が流れる和洋折衷の落ち付いた部屋。
右側にあるローソファーは存在感をなくし 正面の和風木目の衝立がその向こうに備え付けてあるであろうダブルべっトを さも期待させる壁となって凛として構えられていた。

熱く高鳴る鼓動と共に ソファーより衝立の向こうのベットに身を投げ打った。
 「ああぁ・・・」
安堵と溜息と来てしまったと言う表現しようのない場面。
見詰め合った二人の目には罪悪感はなかった。
共に独身、恋人がいたとしても将来を誓い合っている訳ではない。
恋人がいたとしても自由を束縛される権利は強制ではない。
恋人がいたとしても・・・わからなければ・・・。
理屈がいくつも頭をかすめる。
罪悪感の理屈ではない・・・と思う理屈・・・。

 「シャワー浴びたい。。。」
 「うん、いいよ。。一人で?」
 「だって・・・」
 「一緒に入ろう。倒れたら大変だ。。」

横たえた体をゆっくり起こし ベットに腰掛けたまま胸のボタンを1つづつ外していく・・。
そっと剥いだブラウスの下には真っ白なレースのブラジャー。
心模様の色柄とは似つかないような装いに思わず目を見つめる本多。
ここで真意を聞く訳にはいかない。
ここで我に返っては恥をかかせてしまう。
ここはここだけの時間・・・そう割り切ろう・・・。

光とは 影とは 欲望とは 感情とは・・・

シャワーの湯気が立ち込める浴室。。
ボディーシャンプーの泡が2つの体を包み込む。。
立ったままの姿勢が落ち付かなかったが、湯船に浸かるほど余裕も無い。
優しく撫でる初めての感触。
後ろから抱きながら 胸 腰 お尻 腹部 股間。。。泡が螺旋を描いていく。
小さく声を漏らしながら委ねられたその体は もう魅惑の世界に滑り込んでいた。

バスタオルで包めてベットに運ぶ火照った体。
顔に首に耳に・・・暖かい息と共にKissの雨が降り注ぐ。
一瞬目と目を合わせた後 その目は唇に移り、熱く甘く濃厚な口付けが体を振るわせる。。
そっとタオルを抜き取ると高鳴る鼓動が直に伝わる。。
唇が鼓動の近くへ這って行く。。

天上の鏡がまるで他人を見るように不思議な錯覚を覚える。
そこに映っているのは・・・私。
覆い被さる男は・・・私の何。
乳房を弄るその手は誘いの魔手。
転がす舌は毒蛇の狙い。
白い肌とは対照に蠢く黒い生き物。

もう一人の自分と 反応する体の自分。
目を閉じれば真実の鏡も閉じられる・・・。
目を閉じれば・・・快楽だけの心地よい世界。


今にも飛びかかろうとする自分の生き物をコントロールする男。
気持ちと体は本能が迸り、計算する頭は女の体を吟味する・・。
満足させられる男のテクをゆっくりじっくり楽しむ聴覚と視覚。。
男の快感と女の快感・・・

男の魔手があらゆる感覚を呼び起こす。
その手の行方は予想をはるかに越えた遊戯だった。
期待と戸惑いが恥じらいと官能をあらわにする。
と同時に毒蛇の狙いが肌を這う・・。
魔手と毒蛇が別々に攻め寄せる・・。

じらされた女の喘ぎが哀れに思う。
嫌がる素振りと誘いの湿り。
毒蛇の舌が花弁を襲った時・・・・・枕に置かれていた手が握りこぶしとなってシーツを掴む。
優しく そっと 上から下へ 下から上へ 蕾の先を啄ばむ様に 挟むように。。。
体をねじりながら喘ぐ女・・

声とは言えぬ声が天井の鏡にこだまする。。
膝の力が外へと向う。。
花弁を開く魔手の指・・・
桜色の花弁の奥に桜貝。。。
貝の唇がふっくらと膨らんだ時 第一頂点が樹液を流す。。。

紅潮した体をゆっくり起こす女・・・
目で言葉を交わして男を下にする・・・
その目を凝視したまま女の白い手が男の黒い生き物に掴みかかる。
男は一瞬目を閉じる・・・

手の平で感触を味わうように上下する・・・
男の目が向けられた時 女は覆い被さった。
顔を覆う髪の揺らぎが生き物をいとおしむ様に優しく揺れる。。
その唇 舌の動き 暖かさ・・・ 違う女の感覚が男の気持ちを上気させる。。

巧みな女の口さばき・・・どんな過去を持っているのか・・。
どんな男に教育されたのか・・・どんな・・・。
伏し目がちに 女の動きを甘味な思いで観察する。。
頭とは別に黒い生き物は駆け引き無しで天上に向ってそそり立つ。
髪をかきあげ 少し微笑を浮かべながら 女は自ら騎乗位となり手綱を持つように腕を掴む。
下から見上げる女の表情が我を忘れた満干の迸りとなって背中を反らす。。

密道のうねりと波打つ腰
熱い吐息と花蜜の香
流れる汗と感涙の雫

痺れと共に動きが鈍くなって来た女を素早くベットに這わせ
男の激しい攻めの動きが一体の頂点に魂を預ける。
預けた体は容赦なく攻めたてられる。
その激しさが興奮と狂喜と快楽の想いとなって上り詰めた心と体を満足に導いた。。。

そこに時の刻みは存在しなかった。



 ♪°・:,。★♪。。、・。。♪(★,。・:・°♪
 「もしもし。。。」
 「おはよ〜」
 
土曜日の遅い朝・・・
それぞれの朝・・・けだるさの残る明るい太陽に迎えられた。。


彼・彼女・上司・部下・・・・・。
大人の関係の大人の秘密。
誰も何も疑わない
決して聞いてはいけない
絶対聞いて欲しくない・・・。

大人の関係の大人の秘密。。。

                                                     第二話 完 
       

        


  第三話     『 スリルなDECENBER 』

街路樹の紅葉と 落ち葉に埋もれた歩道の石畳
北風に舞う黄色の乱葉が去年のあの日を思い起こさせる・・・。
苦く甘酸っぱい思い出・・・12月がやってくる・・・。

 「もしもーし、もしもしー ちょっと聞こえにくいんですがー、もう少し大きな声でお願い出来ますか〜」

携帯の相手と声たからかに会話しながらこちらへ向ってくる。
その男はサラリーマン風セールスマン?
少し大きめの手提げカバンを左手に持ち、脇にも書類を挟みこんでいる。
前方を見ているのか見ていないのか、足は速いが意識は完全に携帯に向っていた。

私は買い物袋をさげながら駐車場へ向う途中だった。
少し警戒しながら避け気味に歩道の端へ寄るように歩く。

 「はい、はい、そうですね。そちらへ持って伺います。えーっと・・・」
そう言って脇に挟んでいた書類の一部を手に取ろうとした時
 「わぁー!」

強い北風と落ち葉の乱舞と私との接触。
数枚のA4の用紙が空に舞った・・・。

 「あ、失礼! あー!」
書類の行方を目で追いながら車道へ出て行く男。
私も同じように慌てて近くの書類を拾う。
ふと目を遠方に向けた時 向ってくる車の姿。

 「危ない!車!」
そう言いながら買い物袋を足元において車道へ飛び出す。
男は私に軽く手を上げて拾い終わると戻って来た。
 「ありがとう、助かった(笑)」
 「いいえ・・・書類全部ありますか?」
 「大丈夫・・・だと思います。 拾っていただいてありがとう。ドジっちゃいました(笑)」
 「良かった」
清潔そうで爽やかな笑顔とハッキリした口調の態度に好感が持てる。
 「あらぁ〜」
慌てて歩道に置いた買い物袋・・・バランス崩して倒れている。
飛び出した真っ赤なりんごが一つ コロコロとなだらかな坂の歩道を転がっている。
男はそれを追いかけてボールを拾うように手の平で遊びながら笑顔で渡した。
 「美味しそうなりんご」
 「良かったら、どうぞ・・」
 「え、しかし」
 「ご迷惑じゃなければおやつにでも(笑)」
 「あはは、おやつか・・・戴いていきます」
 
それから男は携帯の時間を確認して再びおじぎをし
又携帯を耳に当て、今の出来事は無かったかのように去って行った・・。
私は買い物袋を持ちなおし反対方向の車がある駐車場へ。
北風はなおも吹く。
コートの裾が落ち葉の葉のようにヒラヒラと踊っている。

車の助手席に荷物を乗せ家路を走る街並み
クリスマスのイルミネーションで飾られた華やかな彩りに心弾む若者達の楽しげな光景。
専業主婦の気楽さと 楽しみの無い平凡な毎日・・・。
今年も又いつものように何の変わり栄えもしない名前だけのクリスマス・・・・・か。。


夕食準備にとりかかろうとする夕暮れ、冷蔵庫の食材を選んでいると一本の電話。
 「もしもし、お忙しい時間に失礼いたします。私、○○○ホーム(株)の岡田と申します。奥様でいらっしゃいますか?」
 「はい、そうですが・・」
 「私ども○○○ホームでは、信頼と実績を誇る価値ある総合住宅を目指し、只今リフォームをお考えのお客様には明快・安心・確実なサービスで提供しアフターサービスも徹底して・・・」
 「あのー申し訳ありません、今手が放せなくてお話が・・」
 「あ、お忙しいところ申し訳ありませんでした。先日来お客様のお住まい周辺の担当となりましてお客様の住宅を拝見しましたところ、年数的に・・・」
 「すみません、今忙しいので失礼したいのですが ・・」
 「はい、では又改めまして・・・」
 「失礼します」

仕事とは言え主婦にとって一番忙しい夕暮れ時に時間を取られると、気になる話しでもつい邪見にしてしまう。
逆に相手にとってはたいがいこの時間には家人が帰宅している頃だろうとアクセスしてくるのだろうけど、いつもながら電話セールスは何処も競争だ・・。
丁寧な口調とセールスの熱心さが不快な気持にはならなかった。


 「お母さん、今夜は何?」
 「ビーフシチューとコロッケとサラダと。。」
 「お母さんが作ったコロッケ?」
 「そうよ。。」
 「わーい、楽しみだ〜」

主人は今夜も遅いのだろう・・・。
暮が迫って仕事にも追われ、その上宴会も増える時期。
分かっているものの夫婦の会話も家族揃って食事する機会も少なくなっている。
これと言って不満のない生活・・・それでも何処かに寂しさが見え隠れする・・。
明るい子供たちの声と笑顔が私の心の隙間を埋めてくれる。。


 「みどり、水くれ〜」
午前2時、お酒の匂いを漂わせてベットに入っている私を起こす。 
 「お帰りなさい、今夜も宴会?」
 「仕事がらみの付き合いだよ。  ふぅ〜・・・シャワーだけ浴びたい。 その前に水〜」
背広を片付けながら 付き合いとは言え機嫌良さそうな様子に呆れる私。
キッチンに下りて冷えたウーロン茶を渡す。
 「う〜ん、うまい。」
軽く鼻歌を歌いながらシャワーを浴びる夫。
機嫌悪くされるよりはいいものの、世話をかけずに静かに寝て欲しいものだ・・。

先にベットに入ってウトウトしていると・・
 「寝たのか?」
 「・・・・・」
 「ほんとに寝たのか〜?」
お酒混じりの真夜中の誘いには乗りたくない。
そんな気持で知らぬ顔をしているのに・・
 「みどり〜。。」
いつもならシャワーも面倒なくらい すぐイビキをかきはじめるのに、どうした事だ・・。
私のベットにゴソゴソ入り込み肩を抱きかかえてくる。
 「どうしたのあなた。 もう寝なきゃ。 朝起きれないわよ」
 「いいんだよ・・・今夜は抱きたいんだよ・・」
 「何かあったの?」
 「何にも無いさ。 いいでしょ〜。。。」
何かあったって言わないだろうし もう下着に手をかけている主人を拒否したらややこしくなる。
多分酔った勢いと眠気が覚めた為の行為だろう。 さっさと終って眠りたい・・・。
布団に包まったまま下半身だけ剥がされた姿でムードもなにもあったもんじゃない。
その指先は前戯という名とはほど遠い 浸入するだけの準備が出来ているかどうかの確認のようなものだった。
私ですら半分眠気の中の行為。 満足する期待などしていない。
夫婦とは・・・交わりとは・・・愛とは・・・。。

やはりその行為は自己満足のものでしかなかった。それに対して文句を言う気にもなれない。
今更要求をする事が何になるのか・・要求をする事が主人の自尊心を傷つけはしないか・・
それに何をどう要求すればいいのか・・・。
満足とは何処までなのか・・・何処までが受け入れられるのか・・・。

早く眠らなければ・・・
考えるのはよそう、こればかりが夫婦ではない・・・考えるのはよそう・・。
朝が来てしまう・・・。


冬の朝 暖かい東の太陽が寝不足な瞼に眩しさを与える。
中学2年の娘と小学校5年の息子。
姉のお弁当を覗きながら賑やかな朝食が進んでいる。
 「お父さんは?ご飯食べないの?」
 「そうなの、夕べ飲み過ぎて胃が痛いんだって、だからさっき牛乳飲んだだけ」
 「また夜中だったんだ〜。しょうがないなー」
そんな子供たちの声を聞いてか聞かずか、スーツに着替えた主人はチラッとキッチンを覗いて玄関へ向う。
 「いってらっしゃーい、酔っ払いさーん」
 「はーい、行ってきますよー」

 「あなた・・・今夜は・・・」
 「分からん。 食事はいらん」
 「行ってらっしゃい。。」
 「ん。」

その後を追うように子供たちの登校時間が来る。
何処も同じような朝の光景であろう。
見送りながら空を仰ぐと、真っ青な空に一筋の白いライン。
飛行機雲を見るのも久しぶりだ。

主婦の午前中。
キッチンを片付けながら洗濯機を回し、TVで朝のニュースを聞きながら手を動かす・・。
キッチンが片付くと新聞広告に目を通し、時折TV画面に目を移す。
事件は毎日起こる。
悲惨な事故も後を留まらない。
ワイドショーも大げさに喧しく芸能界を追っかける。
バラエティー番組も娯楽映画も目白押し。
世間は動いている。
世間はどんどん進んでいる。
私は・・・今日の私には予定がない・・・。
平和なのか、取り残されているのか・・。


ルルルル。。。ルルルル。。。ルルル。。
 「もしもし、○○ですが」
 「もしもし奥様でいらっしゃいますか?」
 「はい・・・」
 「わたくし○○○ホーム(株)の岡田と申します」
 「あ、昨日の・・・」
 「はい、昨日はお忙しい時間に大変失礼致しました」
 「いーえ、そんな・・」
 「今日は・・・ご在宅でいらっしゃいますか?」
 「はぁ・・・でも・・・」
 「昨日少しお話しさせて頂いたマイホームのリフォームや増改築、又簡単な修繕や日曜大工まで
  どんな小さな作業でも受けたまわっております。このお忙しい暮れの時期 少しでもお役に立てばと、
  只今この地区を周らせて頂いております」
 「リフォームまでは考えていませんが・・・修繕となると・・・」
 「はい! どんな小さな事でもお任せ下さい。今日は・・・お時間ございますか?」
 「え?今日早速修繕に入るの?」
 「いえいえ、一度わたくしが拝見した上で、その専門を派遣する事になります。お見積もりまでは無料ですので
  お気軽にご相談下さい」
 「そうねぇー・・・それじゃー・・・」

決めるかどうか分からなかった。
話しの成り行きと話し方の感じ良さ。それと・・・何の予定もない退屈な日を過ごすよりはと・・・。
午後一番で来る約束を取った。 後3時間余り 何故か時計が気になる。 
洗濯物干さなきゃ 掃除も急がなきゃ お化粧もまだだわ。
そわそわし始めた そんな自分に苦笑する。
たかがセールスマン 何をそんなに構える事があるのか。
でも・・・一人の時に男の人を家に招き入れるのは初めて。
変な緊張が走っていた。。


時計は午後1時を回っていた。
グレーのセーターをクリーム色に変えて、スラックスからジャンパースカートに変えてみた。
コーヒーの準備もOK。
真っ白な陶器に小さな花弁が舞う模様の皿には一つづつ丁寧に包まれたクッキーの盛り。
庭に出してあったミニシクラメンの鉢をリビングのガラステーブルに飾る。。
小さな変化が気持にも行動にも現れる。
もう一度時計に目を移す。。

ピンポォ〜ン♪

 「はい。。。」
 「○○○ホームの岡田でございます」 
玄関のドアーを開ける。スーツ姿の男性の姿。ボーダー柄のネクタイが目に飛び込む。
そして顔を合わせた・・。

 「こんにちは、電話で何度も失礼致しました。 岡田です・・・」
 「・・・あ・・あなたが岡田さん・・・」
自分の勝手な想像が崩れ落ちた。
自分の思い込みで慌しくしていた事が笑い話のように走り去った。

玄関から外回りを眺めたり庭の状態を私見して 手元の資料に目を通す。
 「この辺のお宅は築10年から20年あたりのお宅が多いようですねー」
 「ええ、そうですね。だから少しづついたみだしてきた感じです。
  ほら あそこの樋も歪んでたり、壁の色もくすんできたし。 お肌と一緒ですわ」
 「あはは、奥さん面白い方ですねー。一緒に修繕しちゃいましょうか〜」
 「出来るものなら綺麗になりたいわ」  
緊張がなくなると冗談もスムーズに出てくる。
いい男じゃなかったことが幸いして弾みながら話しも進む。

 「お邪魔しても宜しいでしょうか?」
 「あ、は、はい。 どうぞお上がり下さい」 
リビングに案内しながら、テーブルのシクラメンがこの人には似合わないと 肩が笑うのを気づかれまいとするのがおかしかった。
 「あ、ミニシクラメンですね。。」
 「あら、ご存知なの?お若いのにお花に詳しい?」
 「いや、たまたまこの時期はよく目にするし・・・一人住まいなのでつい最近僕も買ったんですよ」
頭をかきながら照れくさそうにする仕草が妙に可愛らしく思えた。
 「見てのとおり風体も悪いしスーツの似合わない男と会社でも言われています。
  せめて自分の部屋ぐらいは見栄えよくしておかないと・・・で・・・普通のシクラメンよりこちらの方が小さくても
  印象付ける魅力が十分あると思って・・・」
 「大丈夫ですよ。電話の岡田さんも十分魅力的でしたよ」
 「やっぱり・・・」
 「え?」
 「電話・・・だけでしょ? みんなそう言うんだ。 顔出さなければホストno.1になれるって」
 「そ、そんなこと・・・(笑)」
 「あぁ〜、笑いましたねぇ〜。やっぱりそう思ってるんだ奥さんも〜」
 「機嫌なおしてくださいよ。 コーヒー飲まれます?」
 「はい、いただきましょう」
 
おかしかった。
はじめてあった歳下の男性とこんなに打ち解けて話せるなんて。
仕事の話より別の話しで盛り上がってもいいのか心配になりながら、時間も気にせず笑いが続いていた。

 「岡田さんいいの?こんなおばさんの相手になりながら、時間が勿体無いんじゃないの?」
 「とんでもない。(奥さん)と言いたくないほど気持も体も・・・お若いですよ」
 「流石お上手。今日は何軒のお宅で同じこと言われたの?」
 「まいったなぁー、僕にも選ぶ権利がありますからね。
  それに仕事は二の次。成立すればバンバンザイだけど、人と人の繋がりやコミュニケーションも大切だと思っております」
 「へぇ〜。それは社訓なの?」
 「いいえ、わたくしのポリシー。わたくし的教訓です」
 「ふーん。ウチの主人とは全く違うタイプだわ・・・」

 「ただいま〜」

 「あ、子供です。もうこんな時間だった? 何のお話してたのかしら」
 「それでは今日はこの辺で・・・と言うことで、又近々おじゃまします。急ぎでなければ又今度ゆっくり・・」
 「はい、ごめんなさいね。折角来て下さったのに注文も出来なくて」
 「いいえ・・・又おじゃまできますから。。」

送り出した後の爽やかさ・・・セールスの基本かな。。
話してみれば気の優しい 電話の印象と同じような好感の持てる男性だった。
男は見た目より気持。 心が通い合える優しさと思いやり、そして自信と情熱かなぁ〜。
仕事が出来てもプライドが高くて 冷たい印象では安らぎは求められない・・・。

 「おかあさん!」
 「え? なーに?」
 「なーにじゃないわよ。だーれ?あの人」
 「○○○ホームの人」
 「何しに来たの?」
 「ん?便利屋さん・・・かな? チョットした家の修繕を頼もうかと思って」
 「どこをぉ〜?」
 「もう、いちいち何よぉ〜。 おやつあるわよ、食べる?」
 「さっきから聞いてるのに、返事してくれなかったのはおかーさんよ!」

・・・又今度ゆっくり・・・
そんな言葉が笑顔になり、家事に弾みが付く。
顔も体格も関係ない。歳もかなり年下だけど結婚する訳じゃなし、話ししてるだけだもん。
楽しかった事に違いはない。
何かが動き出した・・・。 何かを予感した・・・。


ルルルル。。。。。ルルルル。。。。。
 「もしもし♪」
 「こんにちわ〜。奥様でいらっしゃいますか〜?」
 「・・・はい」
 「わたくし、○○化粧品のサポートガールでございますぅ。 只今無料キャンペーンでお肌診断の・・・」
 「今忙しいので失礼します」

あれから2日経った。
電話が鳴るたびにあの声を探してしまう・・。
違うと知るや声のトーンまで下がってしまって すぐ切りたくなる。
電話があるんじゃないかと思うと買い物まで素早く済ませてしまう。
携帯を教えておけばよかった・・・でも軽率過ぎるし・・・。

今日は土曜日、子供達の帰りも早い。
お昼の準備をしながら諦めていると・・・電話が。
 「もしもし」
 「○○○ホームの・・」
 「岡田さん♪」
 「あ、ビックリした」
 「あ、ご ごめんなさい・・・」
 「いいえ、光栄です。声だけで分かって頂けたのですから。。」
 「。。。。。」
 「今日そちらの方へ伺うつもりでいたのですが、急ぎの仕事で連絡できなくて。月曜日・・・いかがでしょうか?」
 「はい、結構ですよ。何時ごろ?」
 「奥様のご都合に合わせますが・・・」
 「午前中でもいいのかしら?」
 「はい、では10時ごろおじゃまいたします」
 「。。。お待ちしています。。。」
落ち付こうと思っていてもウキウキしている自分がおかしかった。
近所付き合いも親しい友達も少ないんだもの、楽しくお喋り出来る人がいる それだけで嬉しかった。


 「今夜もお父さん遅いの?」
 「どうかしら・・・土曜日だから分からないわね・・・」
 「美里、試験はいつから?」
 「月曜日だよ〜ん。今世紀最終期末試験じゃ〜」
 「月曜日!?」
 「うん、どうして?そんなにビックリ?」
 「おかあさん、おかわり」
 「カズゥ、そんなに食べるとデブになるぞ」
 「姉ちゃんに言われとうないわ!」
 「カズゥ〜〜!」
 「ちょっと、止めなさい。 食事終ってから喧嘩してよ」 
明るい子供達の会話に微笑ながら 月曜日の時間が気にかかる。
別に疾しいことじゃないんだし招き入れる事だって悪いことではない・・・しかし・・・。

 その夜主人はいつもより早く帰ってきた。
お風呂上りにビールを飲みながらTVを見てくつろいでいる。
 「みどり、お前も飲むか?」
 「あら珍しい。あなたから勧めて下さるなんて。。じゃぁ、いただくわ。。」
グラスを手に取り注いでもらう。
目線はTVを見たまま少ない会話が始まる。
子供のこと 植えた花のこと TVのこと・・・
その夜、やはり感は当った。 求めてきた。 受け入れた。。

 「あぁ。。。」
夫婦生活・・・15年・・・激しさもトキメキも新鮮も薄らいでしまう・・・。
仕方のないことだけどこの虚しさはなんだろう・・・。
どうすればあの時の燃えるような気持ちで抱き合えるのだろう・・。

ふと、岡田の顔が浮かんだ。優しい笑顔が目の前に浮んだ。
一瞬驚いて忘れようとしたのだが、何故か不思議な気持になった。
もし・・・もし今主人でなくて岡田さんだったら。。。
目を閉じた・・・想像した・・・どきどきしてきた。。。
 「あっ。。。」
押し殺していた声が小さくもれる。
ふと止まった主人の手が何かを感じ取ったように また動き出す。
手の平も指も唇も同じなのに、岡田を想像するだけで違う動きに感じる。
心の中で話しかける・・・
 ”だめ だめよ 止めて いけないわ。。。”
 ”あぁ。。。そこよ。。。もっと  もっと触って。。。”
胸を撫でまわすその手はコーヒーカップを持った岡田の手を思い出し、ク○○リスを触る指は資料を指差す仕草を思い浮かべ、Kissする柔らかさは優しい言葉を生み出す唇を感じ取る。。
そして思わず背中に手を回して力が入る・・。
 「。。。いつもより濡れてるぞ・・・待ってたのか?」
返事はあいまいに薄く笑顔を見せた。
 「そうか、よかった・・・」
良かったのかどうか分からないが、そう思わせる事も必要かも・・。
その証拠に今夜の主人はマメマメしい。
指でイカせようと努力してくれる。
心の中の不順な気持でここまで感じるならば お互いの為にもいいのかも・・。
 「あぁ。。。あん。。。」
感じる体が熱く火照る。。。

 「みどり、まだまだ女だな。崩れるなよ」
ふっ。そうよ、女なのよ。。妻であり母であり女なのよ。
何一つ欠かしてはいけないのよね。
主人の意図は自分だけの妻であり女であって欲しい・・・分かってるわ・・・分かってるわ・・・。


暖かい太陽が降り注ぐ月曜日。
その足音は約束の5分前にやってきた。
 「こんにちは、暖かい日になりましたね」
ソファーに座った岡田はニコニコと笑顔を見せながら私の背中を追っている。
キッチンから振り向いた時、南の窓の明かりが若い岡田の顔をハッキリと捕らえたことで
自分が老けて見えるのではないかと気になり 横の食器棚のガラスで容姿を確かめてみる。
ついさっきまで十分過ぎるほど鏡に向っていたのに・・・。

 「決まりましたか?」
 「え?・・・」
 「修繕個所ですよ・・・リフォーム」
 「あ・・・リフォーム・・・」
決まっていないし、主人にも話をしていなかった。
温めたカップにコーヒーを注ぎながら返事を探す・・
 「暮になるとあれこれやる事が増えて、なかなか家の事まで手が回らなくて・・」
 「お忙しいからこそ、私達がお役に立てると思うのですが?」
 「・・・ごめんなさいね・・・ハッキリしなくて・・・」
 「いいえ・・・急ぐ事でなければゆっくりで構いませんよ」
向かい合わせで10時のコーヒータイム。。
持参の資料やカタログに 考えるともなくページをめくる。

 「あら、カーテンやカーペットまで扱ってるの?」
 「はい、最近はインテリア関係まで手を広げないと・・・お客様からの注文もありますし・・」
 「2階の部屋のカーテンを替えたいと思ってたのよ」
 「お子さんのお部屋ですか?」
 「いいえ・・・寝室の。。」
 「ああ、寝室のカーテンですか? 選びましょうか?」
 「あ、いえ 自分で選びますから・・・」
 「あ・・・そうですね。僕では雰囲気も分かりませんし・・・。お部屋を拝見できれば・・・」
 「今ですか?」
 「出来れば・・・拝見した方がアドバイスも早いかと・・」
ちょっと迷いながら 断るすべもなく2階へ案内した。

階段を上りながら感情の波を押さえようとする自分のいやらしさに我ながら呆れていた。
あの夜の主人とのSEX・・・この岡田が相手だった。
頭の中の想像が甦り、少し紅潮する頬を悟られまいと なにげに深呼吸する自分がいた。

寝室のドアーを開けるとWベットが目に飛び込んでくる。
レースのカーテンのうねりが影となってベットを強調させる。

 「とてもいいお部屋ですね・・・日当たりもいいし・・・壁の色が落ち着いてる」
岡田の言葉を聞きながら窓際により外の様子を伺ってみる。
道路を隔てた向こう側に家はあるが 街路樹が目隠しとなってこちらを伺う事はない。
岡田はベットの横を擦りぬけて私の立っている南の窓と東側の出窓のカーテンレールを探っている。
部屋の雰囲気を頭に入れながら吟味しているのだろう。

 「派手な色もいやだし落ち着きすぎてもつまらない・・・色と柄がマッチしてお洒落で飽きのこない物・・
  ふふ、注文が多すぎる?」
 「いいえ、大丈夫ですよ。 きっと気に入ってもらえるように頑張りますから」
 「今お願いしたらいつ頃になるかしら・・」
 「来週・・・クリスマスまでには」
 「クリスマス。。。」
 「クリスマス、ご予定は?」
 「予定?・・・別に特別な事は・・・」

その部屋を出るともなくベットの端に座って話をしていた。
岡田は出窓に置かれている観葉植物の鉢の前にもたれるように肘をついていた。
少し振り向きぎみに岡田へ体をねじった時、スカートの前のスリットがかすかに隙間を作り
白い太ももが見え隠れしていた。
岡田の視線がそれを見逃さなかった。
 「カーテンに合わせてベットカバーもお揃いにされる方もみえますよ」
 「このカバーは去年かえたばかりなのよ。 だから・・・。 でもお揃いも素敵よね。。」
手の平でベットを撫でてみた。
柔らかな手触りが体に伝わってくる。
薄いクリーム色の花柄が気持を穏やかにしてくれた。
 
不意に岡田が側まで来ると私の足元にしゃがみ込んだ。
驚いた顔を見せると
 「あ、ビックリした? ごめんなさい。 カバーを見に来たんですよ(笑)」
 「もう・・・襲われるかと思ったわ(笑)」
 「・・・・・いいんですか?そんなこと言って・・・襲いたくなりますよ」
 「・・・・・何言ってるの、おばさんをからかわないで」
 「初めてお会いした時言ったでしょ。 身も心も若いって。 素敵ですよ」
しゃがみ込んで見上げるその目は、からかい半分その気半分。
優しく微笑む唇は物言いげに語りかけていた。。

手が・・・岡田の手が私の足先をそっと触った。
 「なーに? ゴミでも付いてた?」
 「はい、付いてました。 ここにも・・・そしてここにも」
足首からふくらはぎと伝ってくる。
 「やめて!」
立ちあがろうとした。
 「立たないで! 座っていてください」
 「何言ってるの。どうかしてるわ。 変よ」
 「素敵だから・・・綺麗だから・・・」
 「なにバカなこと言ってるの、やめて」
 「こんな気持になったの初めてです。 ずっと想ってた。 ずっと想いつづけていたんです。
  笑われてもいい、ここに来る事が 奥さんにお会いすることが出来れば・・・。
  ずっとそう思っていました。 そして思うだけにしておこうと・・・。
  でも・・・無理でした。 今こうしている事が・・・苦しい・・・」

理性と本能・・・言ってはいけない言葉を言ってしまった。
若い男の告白がバカな事と思いながら、意地らしくさえ思ってしまう。
平凡な生活の中に降って沸いたような出来事。
自分だって想像の世界で楽しんでいたではないか。
想像の相手がここに存在して告白してくれた事実。
驚きと共に愛おしささえ感じる。。

複雑な思いと共に過ぎて行く・・・
立ちあがらない事が受け入れた事になるのだろうか・・・。
受け入れるなんて大それた事。
しかし・・・。

 「・・・・・もう・・・だめだ」
そう言うと私を強引に倒しながら両腿の上に片足を乗せ起き上がれない形にしてしまった。
 「あ・・・いや・・・だめ」
近付く顔を避けようと首をひねるが両手で頬を挟まれて身動きがとれない。
荒い息と鼓動を感じながら その唇は迷いもなく覆い被さってきた。
岡田の肩を離そうとするがそれ以上に胸の力が強かった。
足を動かそうとすればするだけ羽交い締めにされるような勢いでどうしようもなかった。
唇を塞がれながら頭の中はパニックだった。
抵抗すればひるむかと思ったら、反対に本能が剥き出しになってくる若さと行動。
本当に嫌ならもっと激しく抵抗するが・・・・・。
強引なkissにしてはとてもソフトなタッチで 押さえる力と唇の使いかたの違いが不思議だった。
 
 「お願い・・・いやがらないで・・・真剣なんだ・・・お願いだから・・・」
 「・・・・・痛いわ・・・そんなにおさえないで・・・いやがらないから。。」
 「あ・・・ごめん。 痛かった?  ごめんね」
そう言うとまた柔らかな唇が迫ってくる。
それを私は惹き付けるように受け取った。。
 「あぁ。。。嬉しい。。  分かってくれて嬉しい」
 「これ以上はダメ」
 「え?どうして?」
 「娘が・・・今日はテストの日で帰りが早いの・・・だから・・・」
 「そうか・・・それは危なかった。 じゃー・・・」
 「ええ・・・・」
 「・・・・・クリスマス前後・・・会えないかな」
 「・・・わからない・・・」
 「会いたい。 ゆっくり会いたい。。」
 「・・・・・電話するわ」
 「携帯、教えるよ」
 「うん・・・わかった・・・」

駄目よ・・・ここまで・・・ここまでで十分。
十分トキメキもスリルもロマンスも味わったじゃない・・・駄目よこれ以上・・・。
自分に言い聞かせる。
言い聞かせる自分と・・・
結構出来るもんだわ。
私もまだまだイケルのね。
もう少し楽しんでみようかしら・・・外ならわからない・・・。

23日土曜日。
主人は忘年会。 子供達はクリスマスパーティーに呼ばれている。
私も・・・久々の忘年会として・・・。
秘密の時間が始まった。。。


 「よく来てくれたね、嬉しい。。」
 「・・・一人住まいにしては綺麗に片付いているのね。 あ、シクラメン。。」
人目をはばかる事だけに、むやみに街へ出て歩くわけにも行かない。
誰に見られるかわからないので二人一緒の車に乗るわけにはいかない。
多分大丈夫だろうという安易な気持がとんでもない事になりかねない。
そんな心配や後ろめたさを圧してまで一人地下鉄を乗り継いでワンルームマンションへ忍び込む。

振るえる気持と熱い体。
矛盾と現実。
ほんとにいいのか・・・良くないに決まっている。
引き返すか・・・今更。
開き直るか・・・それもはしたない。
どうしたら・・・素直になろう。。。

 「奥さん。。。」
玄関にたたずむ私を せかすように引っ張り入れて素早く鍵をかけると思いきり抱きしめられた。
肩に下げたショルダーバックが肘まで落ちてひっかかる。
それを持ち替えて少し離すように床へおとす。
コートの厚みが背中に回された手の感触を薄い物にしている。
脱ぐ時間さえ惜しむように抱きしめてくれる岡田の熱い思いに感激する。
そのままじっとしている時間がどれぐらいだろう・・・
やっとこの日が来た、そんな感激が立ち尽くしたまま抱き合う恋人同士のように込み上げてくる。

 「はぁー。。。」
軽いため息と共にやっと体を離した岡田は、にっこり笑って慌てたようにコートを脱がしてくれた。
 「何か飲む?」
 「あ・・・今は何も・・・」
 「後から喉が乾く?(笑)」
 「。。。もぅ。。。」
熱い眼差しが肌まで浸透してくる。
事前に設定したのだろう、テーブルは部屋の隅に置かれセンターラグは広い空間になっていた。
その真中に座らされ何を話すと言うこともなく一言二言・・・そして見詰め合う。。
ゆっくり側へ来ると伺うように顔を覗きこみ、唇に視線を落としたかと思ったらそのまま倒れこむように覆い被さった。
ベットの時とは違うkiss。激しかった。苦しいぐらいだった。
kissをしながら片手は胸を弄っている。
セーターの下から少し冷たい手の平がスリップに触れる。
そのスリップをたくし上げようとしている。
 「あ。。。まって。。」
 「ん?・・・なに?」
 「・・・シャワー・・・」
 「いいよシャワーなんか」
 「だって・・・」
 「いいよ、そのままがいい。そのままの君を感じたいから」
 「・・・・・」
 「いいんだよ・・・」
そう言うとひるむ私をよそに、セーターもロングスカートもストッキングも・・・器用に剥いでいく。
 「立って」
 「?・・・こう?」
スリップ姿の私を真中に立たせて少し離れて見つめている。
 「いやね〜。恥ずかしいわ。 じろじろ見ないでよ。。」
 「凄く色っぽい。 完成間近な女の姿だ」
 「完成間近? 完成されてないの?」
 「そう、未完成。 旦那さんしか知らないんだろ? もっと違う女の出し方・・・知らないんだろ?」
 「女のだし方??」
 「試してみようよ・・・。ここで・・・。違う素晴らしさを」
 「・・・? 何をするの?」
 「心配しないで・・・」
そう言うとテレビボードの下からカメラを取り出した。
 「写真?!」
 「うん、学生時代カメラ部だったんだ。 綺麗に写すよ まかせといて」
 「モデルみたい」
 「うん、最高の被写体だよ」
 「どうすればいいの?」
岡田はカメラを覗きながら指示し始めた。
 「まずそのままでいいよ・・・笑って・・・笑って・・・そう。  いいよ  可愛いよ こっちを見て・・」
立ち尽くす私の周りをぐるぐる回りながら顔のアップや表情を撮り続ける。
 「座って、足を組んで・・・、そう   スリップ取って・・・そう いいよ・・・。  後ろに手をついて・・・
  こっちを見て  首を後ろへ  そう・・・目を閉じて・・・  綺麗だよ・・」
上手い誘導と乗せさせるような言葉の作戦。
私は自然に動いていた。 自然に笑顔になっていた。 完成されるために・・。
 「ブラを外して」
 「・・・・・」
 「外して・・・」
驚いたけど、不思議に命令される事が心地よくなっている。
 「綺麗だよ・・・・・触って・・・胸をそっと触って・・・。 そう・・・そのまま・・・。  ショーツ・・・取ろうか」
 「・・・・・はい」
 「まって・・・半分だけ・・・途中まで下ろして」
言うなりになっている自分が自分ではないような気がした。
恥ずかしいけど心地よさもあった・・。
 「もう少し完成度をアップさせるよ、いいね?」
 「ええ、まかせるは。。」
 「よし」
私の瞳に視線を残したまま軽く胸をつかまれた。
ウッと声を出して目を閉じた。
 「そのまま。そのままでいて」
カメラのシャッター音が鳴り響く・・ 
そっと肩を押されて床にしゃがんだ。 しゃがんだ格好が卑猥に感じた。
 「うんそれもいい、じっとしてるんだよ。・・・よーし動いてみて、好きなように・・・その調子。。」
レンズから眺める目は動物が獲物を狙うかのようにこちらを見据えていた。
一瞬の小さな動きも見逃すまいとシャッターが追いかける。

シャッターを押しつづけていたその指が止まると、今度は私の体に乗り移ってきた。
素早く衣服を脱ぎ捨てたその体は、服を着ている時の想像より遥かに鍛え上げられている体だった。
胸幅も厚く筋肉も程々に付いていた。
指は芸術品をしたためるように丹念に弄っている。
固い指の後から舌の柔らかな感覚が補うように遊んでいる。
これは また写真のための構図を作るための動きなのだろうか・・・
どうしたらいいのだ・・・岡田の意図がわからない。
 「いい香りがする。。」
 「え? 香水は付けていないわ」
 「香水なんて要らない。 君の身体の香りだよ、いい匂いだ」
そんな事言われたのは初めてだった。
自分の匂いなんて自分ではわからない。
思わず手の甲を鼻にもってきた。
 「手じゃないよ、体。。胸とか背中とか・・・・・こことか。。」
 「ああぁ。。。あ。。。」
舌が味わっている・・・
ほんのり湿っていたその場所は岡田の舌の誘いで泉が湧き出るように潤っている。
昼間の誘いは部屋を暗くは出来なかった。
ハッキリ浮びあがる泉の元は恥ずかしさを忘れて岡田の目に焼き付くように開花している。
そんなあらわな姿を見られて、今更拒む仕草ももどかしかった。
指はその花弁を広げて舌を這わせやすいようにしている。
ゆっくりと・・・じらすように 軽く 強く 深く 浅く・・・その舌は一つの生き物のように動く。。
 「ん。。。あん。  ああぁ。。。 いやぁ〜。。。あっ。。。」
同時に指が浸入してきた。
言いようのない快感で喘ぎ声が部屋を熟める。

十分濡れた花弁を確かめ満足の笑顔を見せると私の手を誘導して男のモノを握らされた。
熱く 固く ドクドクと熱い血が流れる鼓動を感じる。
それは同じようであり同じではない 若さと勢いに改めて感動した。
誘導のないまま それを咥えることに抵抗は全くなかった。

 「ああ・・・いい、気持いい・・・上手だ。。。」

たっぷり含んだ鼓動のモノは、ゆっくり・・・それでいて勢いよく花弁の溝に突き進んできた。
ピッタリと吸い付いた壁は、震えるように波打つようにそのモノを包み込んだ。
持ち上げられた両足がリズミカルに揺れる。
委ねられた体の脂肪が香りを放ちながら波になる。
息が荒くなり言葉を交わす事さえ忘れてしまう。
主のいないカメラのレンズが二人を見据えている。
男と女の声が熱い時の流れを刻むように続いている。。。

 「立って!」
声に驚いてけだるく立ちあがろうとすると、脇を抱えて窓際に連れていかれた。
外の景色は冬の空。
向い側のマンションのカーテンが開いている。
見えるのではないかと隠れようとする私を静止して
 「このまま、このままでいい外を見てて」
後ろから又つき立てられた。
声と同時に天を仰ぐ。
見られるんじゃないかという恐怖と恥ずかしさと・・・そしてスリル。
初めての出来事と初めての経験ばかりで、興奮は最高潮に達する。
 「いいね、イクよ。 このままがいい? 横になる?」
 「・・・・・このままでいい・・・このまま。。」
 「よし・・・・・・ああ・・・ああぁ・・・うっ・・・・」
 「おおぉ。。。あん・・あ。。あ。。。ああぁぁぁ・・・・」

そのまま崩れ落ちる。
窓にしっかり手の平の跡を付けて・・・。
裸のまま顔を見合わせて笑ってしまった。
 「どう?良かった?」
 「ええ・・・驚いたけど・・・スリル万点で・・」
 「でしょ・・・・・また・・・・ね。。」
 「・・・・・」


秘密の時間は熱く激しく燃え尽きた。
クリスマスを控えた秘密の贈り物。
何事もないように夜は更ける。。
何事もないように明かりが点る。。



ピンポォ〜ン。。。。。
 「はーい、どちらさまですか?」
 「○○自動車の三上と申します」
暮の忙しい時にセールス?
 「こんにちは、奥様でいらっしゃいますか?」
 「はい・・・。   あ・・・あなた」
 「え?・・・・・   あ・・・りんごの」
 「やっぱり!あの時りんごあげた人」
 「いや〜、すみませんでした。あの時動揺して失礼な事ばかり・・・」
 「いいえ、失礼だなんて・・・・・車のセールス?」
 「はい・・・今年最後のセールスマンです(笑)」
 「・・・・・何かの縁ね・・・・・暖かいお茶でもいかが?」
 「あ、はい! ありがとうございます!」


20世紀が終ろうとしている。
終りがあれば始まりもある。

始まりは・・・・・あなたしだい・・・・・自分しだい・・・・・。。。

                                            第三話 完 

     
                                                                                                                                                                    

  第四話   21世紀 新春特別企画 『 温泉一泊 暗黙のオフ会 』 (絶対フィクションです(笑))

                  マダム・マリオン オフ会連絡

           日   時  ○月×日(土)〜×日(日) 
           集   合  午前9時 名古屋駅 新幹線側 西出口 (現地集合も可)
           参 加 者  現在 男・10人 女・6人 (当日増減有りかも)
           メ ンバー   老若男女
           行 き 先  岐阜県益田群下呂町  下呂温泉

  中央自動車道・中津川インターから国道257号経由で約50km。
 岐阜県のほぼ中央、山並みに抱かれて流れる飛騨川の両岸に一大温泉街を作り上げているのが、ここ下呂温泉である。
 「我が国の緒州に温泉は数あれど、その最も著しいものは摂津の有馬、上の草津、飛騨の湯島(下呂のこと)、この3処なり」。
こう記したのは江戸時代の儒学者・林羅山。天下の三名泉と讃えられた温泉は、今も賑わいを見せている。
 
温泉街はさすがに大きく、歩きだと余程時間の余裕がなければ廻れないだろう。
それにしても、大きなホテルや旅館に、観光バスで乗り付けた団体客がぞろぞろと入っていくのが目立つ。
そんな人達が早めに湯に浸かり、町の中を浴衣掛けで散策するようになるとあちらこちらに明かりが灯り始め、
温泉情緒がぐっと漂ってくる。
お座敷に向かうんだろうか、日本髪の芸妓さんの姿もちらほら見えて、湯の街ならではの情景だ。

 「はーい、皆様おまたせいたしました〜。お宿に到着でーす。お手荷物お忘れ物のないようにお願いしま〜す」
 「わぁ、マリオン!素敵な旅館ね〜」
 「でしょ。下呂の○○館と言ったら知らない人いないぐらいよ」
 「マリオン、ここで合流する人もいるんだよね?」
 「うん。家族でドライブしながら来てる人もいるから もっと賑やかになるわよ〜」
 「いいねー和風旅館。山の中の温泉に来た―って感じで・・」
 「何いってんの、山の中じゃん」
 「あのなぁ、いい空気を吸いながら気分良くしてるのに、突っかかるなよー」
 「あはは、だって彼女もう出来あがってるから逆らわない方が身の為だぞ」
 「バスの中でどれだけ飲んだの?」
 「缶ビール3本」
 「かるいかるい」
笑いの耐えないバスでの数時間。
始めて顔を合わせたとは思えないような溶け込み。
数年前には考えられないようなネットの出会い。
この出会いがアバンチュールなオフ会へと導く甘い香り。。。
あってはいけない、あるかもしれない、ここだけのお話しとして・・・・・。

玄関に立つと、年配の仲居さんが丁寧に迎えてくれた。
囲炉裏が切られたロビーで一息入れていると
 「あのー、オフ会の・・・」
 「あ、私マリオンです。あなたは・・・トッポさん?」
 「はい!トッポです。30分ほど前に家族と来ました。よろしく!」
 「あぁ。トッポさんだー。僕はカリウドです、よろしく」」
 「私はスミレ」
 「僕は・・・」
 「待って、自己紹介は宴会の席でゆっくり。ほら、仲居さんが部屋へ案内してくれるから それぞれ渡してある部屋割りに従って、部屋の確認をしてください。その後・・・どうしようか、1度ロビーで集まる?それとも早速お風呂にする?」
 「お風呂入るとお化粧落ちちゃうから、その前にみんなで集まりたーい」
 「そうね、夜中も露天風呂は開いてるから慌てる事もないかしら」
 「じゃー、荷物を置いたらロビーに集合!」
 「はーーーい」

仲居さんはこうした宿にありがちな変に気取ったところがなく、気さくで臨機応変。
どうも手馴れた年配の仲居さんが多いようで、それが安心感につながっている。
ギシギシと長い廊下を渡りながら早速あちこち見学してみて、
最初に気付いたのは窓ガラスが微妙に波打っていること。
昭和初期のまんまである。
床や壁にしてもそうで、丹念に磨き込まれ、大切にされていることがわかる。
案内された客室もまた贅沢であり、懐かしさを感じさせる創りだった。

男三部屋 女二部屋の分割で廊下を隔てて男女が別れ、他に家族部屋が一つ。
山側と川側の景色の差が値段の差でもある。
  
 「ねぇ、さっきバスの中で話してた事だけど、どうおもう?」
 「ん?あぁマリオンの歳?」
 「うん、いったいいくつなんだろう」
 「若作りしてるけど、結構いってるんじゃない?」
 「そう思う?私より上かしら・・」
 「それはどうかなー。モコはいくつ?」
 「さっき教えたじゃない、38よ」
 「そこまではいってないとおもうけど・・・ひょっとしたら・・・。それより、カリウドさんがいい男じゃない」
 「あら、やっぱりそう思った? ムサシさんもいいな〜35歳ぐらいでしょ?」
 「もう!みんないいんじゃない!」
 「あははは、今夜が楽しみ♪」
 「な〜にしに来たのぉ〜?」
 「あなたと一緒よ」
 「きゃぁ〜〜〜♪」

 「おーい、荷物置いたら集合だぞ」
 「いや〜ん、女性の部屋覗かないで〜」
 「何処に女性がいるんだぁ〜?」 ======@@@@@ ε=ε=ε=ε=ε=ε=┏(; ̄▽ ̄)┛

 「じゃー、宴会前に ここでコーヒーでもジュースでも お好きな飲み物頼んで、自己紹介だけしておきましょうか」
 「ビール!」
 「焼酎!」
 「おい、それは宴会までお預け」
 「ビールぐらいならいいわよねぇ、バスでも飲んでたんだから」
 「うん、子供じゃないんだから好きにしたら?」
 「はい、じゃー適当に飲みながら聞いて下さい。
  えーっと、初めてのオフ会でいきなり温泉まで来て、テンションが上がりっぱなしの方もいられるようですが(笑)
  オフの主催者は私マリオンですが、もうここに着いたらみんなが中心です。
  幹事と言う名は捨てて、それぞれ楽しんで頂ければいいので、私には気を使わないで下さい。
  とりあえず纏め役としては引きうけますが、男性のリーダーも決めておいた方がいいかな、っとおもうのですが・・。
  立候補か推薦者いらっしゃいますか?」
 「一番年上は誰かな?ちなみに僕は34歳」
 「僕は37」
 「30!」
 「下の奴はいわんでいい!」
 (笑)
 「僕かな〜・・・55歳ですが・・・よろしく サスライ と言います」」
 「え〜、55歳!? 見えませんよ〜」
 「そうですよ〜、サスライさんは54歳くらいと思ってました〜」
 (爆笑)
 「はい、ではサスライさんに男性のリーダーになっていただきます。皆さんよろしいでしょうか?」
 (全)「はーい、よろしくお願いしま〜す。」

 「早く風呂は入りてぇ〜」
 「早くやりてぇ〜」
 「ばーか! 一人でヤッテろ!」
 
初めてのオフとは思えないほど和やかな雰囲気と笑いの中で自己紹介が進み、夕食まで2時間あまり
自由時間として過ごす事になった。。




 「逢いたかった。。」
 「私も。。。この日をどんなに待ち焦がれたか。。」
 「ここではマズイ、出よう」
 「何処へ?怪しまれない?」
 「ロービーに居たって何も話せないじゃないか。僕が先に外へ出るからあとでおいで。
  バスで登ってきた時途中に売店があったろ。御幣餅売ってる所、あそこで待ってる」
 「わかったわ。。。」
2人は以前からメールで示し合せていた。オフ会の泊まりなら怪しまれず堂々と家を開けられる。
当然周りの者は気付いていない。
2人で過ごしたい為にバスの中でも無口で、親しい友を作ろうとしなかった事が自由行動を有利にした。
 「カズ!」
 「ミヨちゃん!」
 「誰にも見られなかった?」
 「多分、みんな騒いでたしお風呂へ行った人が多かったわ」
 「よかった。。。みよちゃん。。。綺麗だよ」
 「カズ。。。嬉しい。。。」

旅館が位置する山肌からなだらかに降りる道、脇へ入るとうっそうと茂る森の散歩道も多く、カップルの姿も珍しくない。
見知らぬ観光客の目を気にする事もなく しっかり肩を寄せ合い腰に手を回して刹那を楽しむ二人の姿。。
 「一緒に温泉入りたいなぁ」
 「家族風呂・・・あるけど あそこでは・・・」
 「探そうか」
 「私達凄いわね。。」
 「恥ずかしい? メールや電話で気持を確かめあってるし、2人はこうなる運命なのさ。逢いたくて逢いたくて・・・
  そして肌で確かめ合いたい・・・そう2人で約束しただろ?」
 「うん・・・でもやっぱりいざとなったら恥ずかしい。。。」
 「ミヨちゃん、可愛いよ。。大切にする。。心配しないで。。。
  あ!あそこ、書いてあるよ。家族風呂あります、声をかけて下さいって」
 「ほんとだ、有ったのね」

 「すみませーん」
 「はいはい、いらっしゃい」
 「えっと、外に書いてあった家族風呂なんですが」
 「はいはい、まだ今なら空いてますよ。5時の予約が1組あるけど、それまでなら」
 「1時間以上ある。お願いします」
 「はい、どうぞこちらへ・・・500円ね」

案内されたそこは、二つの家族風呂が用意されていて、庭石で仕切られた隣りのお風呂は使用中になっていた。
サッシの引き戸をそっと開けると簡素な2畳ほどの脱衣所が現われ床のスノコが乾き切っていなかった。
 「ここで・・・」
少し躊躇しているミヨを見て、すぐ引き戸の鍵をかけ、きつく抱きしめた。
 「ミヨちゃん!ミヨ。。。」
 「あぁ。。カズ。。。」
抱きしめながら手際良く脱がしていく・・・だんだん薄着になっていく2人の肌は山の冷たい空気に触れて、
寒さとも怯えともとれない小さな震え・・・
期待と胸の鼓動と共に岩に囲まれた湯気の中へ紛れ込んでいった。。。


 「白い肌が眩しいよ・・」
 「恥ずかしいわ、そんなに見ないで。ここ・・・明る過ぎる・・」
 「あぁ〜・・・よかった・・・会えてよかった・・・」
 「ええ。。。幸せよ。。。」
 「ここへおいで・・・」
 「・・・あっ・・・  重くない?」
 「軽いさ・・・  うなじが・・・色っぽい。。」
黒い岩に檜作りの湯船の端、、重なり合う2人の体は上気した肌と鼓動でガラスのくもりも雫の雨。。。
後ろからまわされた手がミヨの体を撫で回す・・。
 「あ・・ あん・・・」
 「ミヨ・・・ 綺麗だよ・・・ あぁ・・・」
 「・・・あん・・・  あっ ・・・ぃ・・・ぁ。。。。。」
 「熱い・・・でよう・・・」
湯船から抱きかかえるように洗い場へ・・
窓から見える景色は山肌と遠い旅館の屋根模様。
少し冷気を取り込んで、すぅ〜っと湯気が逃げて行く・・・。
 「ここへ・・・ここへ手を付いて」 
 「?・・・ここ?」
 「片足・・・この岩に乗せて」
 「・・・・・何をするの?」
 「部屋じゃ出来ない事・・・布団じゃ出来ない事・・・いいね?」
 「・・・恥ずかしいけど・・・」
 「今のうちに君の全てを見たいから・・・記憶に留めておきたいから・・・君の全てを知りたいから・・・」
 「カズ・・・」
 「見せて・・・」
少し躊躇するものの、旅先の大胆さに拍車をかけた・・・。
 「こう?・・・でも・・・いや やっぱりいやよこんなかっこう・・」
 「だってここじゃ痛くて横になれないよ。 
  それに・・・滅多に出来ない事をするのが・・・ここへ来た事の楽しみの一つでしょ?」
 「理屈が上手なのね・・・」
そう言いながら従うミヨ。
そうと決まったら、自分で置きやすい岩の足場を探し出した。
 「こんな感じで・・・どう?」
 「・・・・・その気になったね・・・いいよ・・・。 楽しもう。。」
 「あっ・・・!・・・そんな・・・」
 「もっと足を上げて・・・ 見えないよ ・・・・・よーし・・・・・」
少し背中に岩の痛さを感じながら、意識はそこに集中していた。
上げた片足が岩のあら肌に食い込む・・・。
大きな手の平が胸を弄り、片手で腿を押し開きながら潜り込むように舌を這わせる愛欲の荒波。
押し殺そうとする唸り声が狭い浴槽にこだまする。。
 「いい?・・・気持いい?・・・こうしたら・・・どう?・・・」
 「・・・・あん・・・  ぁ・・・  力が・・・ちからが抜けそう。。。 」
 「いいよ・・・もっと感じて・・・」


 「して・・・僕のも・・・」
その上ずった声に 遠のきそうな意識を戻し、すぐにしゃがんで深赤く脈打つ魂を優しく掴む・・・。
 「うっ・・・おぉ・・・ぅ・・・」
夢中でほおばる淫乱な唇。
汗でまみれたその顔で、涙目ともとれる潤んだ瞳。
上と下とで合わされた視線は野獣とメス猫の仮面を付けた男と女。
 「おぉ・・・ミヨ・・・気持いい・・」
繰り返される洗い場のなやましい動き・・・
檜の香りと山の冷たい空気が逆上せ上がるのを防いでいる。
 「後ろ向いて」
 「あ・・・」
 「ここに両手置いてふんばってて」
言われるままに岩に手を付き片手で髪をかけ上げようとしたところへ・・
 「ああん!・・・あぁ〜」
軽く腰を持ち上げられて、男の魂が滑り込んで来た。

ゆっくり・・・深く・・・強く・・・激しく・・・

声が外に漏れているかもしれない・・
隣りの家族風呂に入っている人達がどういう関係かわからないが
子供連れの家族なら逃げ出しているかもしれない。
老夫婦なら呆気に取られているかもしれない。
カップルなら負けじと関係しているかもしれない。

気にしながら、気にする余裕もなく欲望に埋もれる欲情の密室。。

 「もう・・・もうだめだ・・・イクよ・・・いいかい?」
 「ああぁん・・・あぁ〜・・・イって。。。ああぁ〜」
狂ったような男根が肉に突き刺さるように密着する。
動きが止まった時・・・身震いのような痙攣が走る・・
離れたそこは歓喜の余韻とともにネットリとした流れに溢れる。。

 「良かったよ・・・とっても・・・」
 「こんなに燃えるなんて・・・恥ずかしいわ・・・」
 「嬉しいよ・・・全てを知って・・・満足さ・・・・・・」
 「こうしてずっと居たいけど、もう行かなきゃ・・・」
 「そうだね、探してるかもしれないからね・・・」


一つの秘密が起きたオフ・・
まだまだ起こる秘密のオフ・・
一泊オフ会・・・あなたなら・・・

 「いやぁ〜全くいいお湯だった〜。。。」
   「これで酒も食事も美味くなるな」
 「宴会が楽しみだよ。酒が入れば少々の無礼講は許されるだろ?」
   「そうは言ってもあまり羽目外してもまずいだろ」
 「さっき、フロントで聞いたけど、9時にマイクロバスが迎えに来て面白いとこ連れて行ってくれるらしいぞ」
   「面白いとこ?何処だいそれ」
 「まさか・・・女??」
   「そう・・・おんな・・・ストリップ・・・」
 「そんなところがあるのかよ!」
   「わざわざマイクロバスが来るか?」
 「来るんだよ!しっかり聞いてきたから。観光客の為の劇場があるんだと。女性用も」
   「じょ、女性用??」
 「多分あっちにも耳に入っていると思うよ。はたして・・・行くかな?」
   「ほんとだったら、オレ行く!」
 「お、俺も!」


 
 「な、何見てんのよ・・」
   「だって、カリンさんって以外と胸があるんだもん」
 「いやねぇ〜、何処見てんのよ!モコさんだってボヨヨ〜ンじゃないの〜」
   「でもね〜引力には適わないのよね〜・・・年ごとに下がっていく・・・寂しいわ〜」
 「女だけじゃないわよ、男だって角度が違ってくるでしょ」
   「あらそうなの?若い男しか相手しないから知らなかったわ。お〜ほっほっほっほ。。」
 「なーに夢みたいな事言ってるのよ。この年になって若い男が相手してくれるわけないでしょ」
   「あらら、諦めてるの?勿体無いな〜」
 「じゃーなんですか、ご経験があると?20代?30代?」
   「これ以上はシラフでは話せません」
 「では、御酒の席でゆっくりと・・・」


 「はーい皆様お揃いでしょうか〜? 流石に全員温泉入ってホカホカ気分ですね〜。
  これから美味しいお酒やビールはもちろん、お腹いっぱいお食事を堪能されて楽しい時間をお過ごしくださーい」
   「そこに置いてあるカラオケは使えるの〜?」
 「もちろん自由ですよ。仲居さんに言ってくだされば随時OKでーす」
   「おーい、宴会幹事は誰だ?」
 「そんなのいたっけ?」
   「誰か出し物はないのか?」
 「酒が進めば現れるだろう」
   「そうか!そりゃ楽しみだ!」
 「乾杯しようぜ、乾杯」
   「そうだよ、マリオン音戸とってよ」
 「あ、じゃーここはサスライさん。お願いしようかな。。」
   「ほいきた合点。 では皆さん、グラスをお持ち下さい・・・。
    本日待ちに待ったマリオンのHPを愛する友よ。よくぞ遠いところを集まって下さった。
    マリオンの為にも我々の為にも、この温泉オフを楽しく有意義にするために最大の努力と・・・」
 「おいおい・・話しが堅いぜ・・・」
   「しぃー!せっかく乗ってるんだから喋らせてあげなさいよ」
 「”#$%&%$#〜〜という事で・・・かんぱ〜〜〜〜い!」
   「かんぱ〜〜〜〜〜〜〜〜い!!!」
 
 
 
 「ではここで改めてお一人ずつ自己紹介をしていただきましょうか」
   「お堅い事は抜きよ」
 「いやん、固くなくっちゃつまんない・・」
   「もう酔っぱらってるやつがいるぞ!」
 「だれだい」
   「ムサシだ」
 「やっぱりアイツか」
   「やっぱり?どうして?」
 「はいはい、分かりました。進めますね。
  順番は・・・入り口の方からいきましょうか・・・ミヨさん?だったかしら。どうぞ〜」
   「いよぉ!ミヨちゃん。待ってました!」
 「あ、私から・・・ですか・・・。ど、どうしよう・・・」
   「ミヨさん、大丈夫よ。みんなもう飲んでてしっかり聞いちゃいないから、気楽にね」
 「・・・はい・・・。皆さんこんばんは。 大阪からやってきましたミヨです。宜しくお願いします」
   「大阪か〜、俺京都。近いね〜よろしく〜」
 「お前ばっかし挨拶してどうするんだよぉ・・・僕は」
   「はいはい、順番よ。次の方どうぞ〜」
 「スミレと言います。関東です。皆さんにお会い出来て嬉しいです♪」
   「スミレちゃんいくつぅ〜?」
 「自称・・・ハタチでーす♪」
   「10年前〜?」
 「5年前〜・・・キャ!」
   「え〜っと・・・トッポです。僕だけ家族で参加させて頂いてます。
    え〜っと、妻のサチと娘のユキ3歳です。よろしく」
 「はーい、ユキちゃん可愛いわね〜。大人しくておりこうさんですねぇ〜」
   「私は・・・コノハです。静岡から来ました。年は・・・30代。恋人募集中です、よろしく。。」
 「立候補しようかな、コノハさんの理想の男性は?」
   「理想は・・・優しくて・・・優しい人なら・・・」
 「優しさには負けないよ〜、あとからイイコトしようね〜」
   「酔っぱらいはほっといて、次の方どうぞ〜」


和気藹々の宴会が進む・・・総勢16人の大人の男女の温泉旅行・・・
話が弾み 酒が進み 笑いがこぼれ 歌が飛び出る・・
正面に設えられたステージでカラオケが鳴り響く
それに合わせ、手拍子や掛け声。歌って踊って・・・騒ぎは続く・・・



 
  「ねぇ、さっき言った事わかった?」
    「・・・本気なの?・・・」
  「嘘だと思ってるの?」  
    「・・・だって・・・急に言われても・・・」
  「だから・・・急じゃないって言ってるだろ?ずっと君の事・・・気になってたんだ」
    「・・・嬉しいけど・・・私は・・・」
  「あとでゆっくり話がしたいよ。僕の事を知ってもらうためにも・・・ね・・・あとで・・・ね。。」
    「みんながいるじゃない。どうやって2人になるの?」
  「みんな飲んでるし、どっかの部屋に集合して飲んだり話しこむんだろ?そのスキに会おうよ。
   大丈夫、上手く誘うからさ。。」
    「・・・見つかったら・・・」
  「大丈夫だよ、心配ないって。例え見られても旅の空、2人で話してて何が悪い?」
    「・・・お話するだけよ・・・」
  「わかってるよ。君のこといっぱい知りたいから・・・たくさん話ししよう・・・」 



  「おい、そろそろ9時だぜ。行くんだろ?ストリップ」
    「そうだよなー、何時まで宴会やるのかなー」
  「抜け出すか?」
    「そういうワケにもいかんだろう・・・。聞いてみるか・・・」
  「あ、丁度いい時間みたいだぜ。 サスライさんが何か言ってる」


  「え〜、かなり盛り上がって、話も尽きず酒も止まらず切り上げるのは殺生な事ですが〜。
   この宴会場から一旦引き上げて、この続きは10畳部屋の方でしましょうか〜。
   しかし折角温泉来たから自由に風呂入ってもいいし、カラオケルームもあるし、ゲームコーナーもあるので
   自由にしてもいいんですがね・・・」
     「あはは・・・サスライさんかなり酔って、話しがしどろもどろ〜。結局自由って事ですね〜」
  「そう言う事です! バンザ〜〜〜イ!」
     「だめだこりゃ、誰か部屋に運んであげてくださいね〜」


  「おい、誰と誰が行くんだい?」 
     「そんな事大きな声で集められないだろ」
  「一応男だけに全員伝えるか」
     「あとで女性が知ったら怒るだろ」
  「やらしいってか?」  
     「違う!つれて行かなかったら」
  「めんどくさいな〜。とりあえずフロントへ行こうぜ・・」


  「すみません、夕方聞いたのですが、マイクロバスで・・・」
    「はい!西出口の方でバスが待ってますのでどうぞ!」


  「ああぁ!アイツ、もう乗ってる!(笑)」
    「おおぉ!来たのか! 耳が早え〜な〜(爆)」
  「キャ〜!見つかっちゃった!私達も同伴するわ〜」
    「女が女のストリップ見るの? 面白いか〜?」
  「何事も勉強よ!社会勉強♪ それとねボーイさんに聞いちゃったの。女性用の面白いところも側にあるって」
    「な、何だよその面白いところって・・・」
  「あとで報告するわよ♪」
    「なんというツアーだ〜! 先が恐ろしい・・・・・」


  

  「誰もこない?」
    「来たっていいさ・・・」
  「どうして?」
    「悪い事なんかしてないからさ。大人の男女が部屋にいて何が悪い?」
  「・・・悪くないけど・・・怪しまれても・・・」
    「何を? 気にし過ぎだよ・・・それとも・・・嫌なの?僕と居ることが・・・」
  「ちがう、そんな事言ってないじゃない・・・いじわる・・・」
    「・・・こうして居たいだけだよ・・・君を見つめながら。。。」
  「。。。はずかしいわ。。。そんなにじっと見ないで。。。」
    「じゃー・・・灯り消そうか・・・その方が落ち付いて話せるから・・・」
  「真っ暗も怖いわ・・・」
    「じゃー・・・これくらい。  いいでしょ?」
  「・・・ええ・・・。あ、お茶入れるね」
    「うん、ありがとう」

 部屋の灯りを落して入り口と窓際の間接照明だけがほのかに揺れる。
 向い合わせた座卓が距離をつくり、安心と不安の狭間でお茶を飲む仕草もぎこちなかった。
 なにげに立ちあがった男は窓の外の景色を見つつタバコに火をつける。
 深い息と共に ふぅ〜っと煙を遠くへ飛ばす・・。

  「君・・・タバコは?」
    「少し・・・お酒が入った時ぐらい・・・」
  「さっき吸っていなかったね」
    「ええ・・・切らしていたの」
  「なんだ、そうなんだ。吸う?」
    「いいえ、今は・・」
  「じゃー・・・タバコの匂いは大丈夫だね?」
    「ええ、平気よ。 気を使ってくださってありがとう・・」
  「・・・・・kissする時、嫌われたらいやだからね・・・」
    「・・・・・そんなこと、気にしてたの? 第一・・・kissだなんて・・・」
  「そうか・・・話しだけだったね。君を見てると話なんかしなくても側にいるだけで満足な気分になるよ。
   それほど素敵だよ。 触りでもしたら・・・壊れそうで・・・」
    「そんな・・・誉めて頂ける程素敵じゃありません。それに壊れるだなんて大袈裟よ。。。」
  「ほんと?・・・ほんとに壊れない?・・・」
    
 ゆっくりタバコの火を消して障子を閉める。
 女の様子を伺いながらお茶を一口・・・
 女は黙って湯のみを揺らしながら気配を感じる・・・
 男は女の横へ座る・・
 女はちょっと驚きながら男を見る・・
 男はじっと目を見ながら・・・微笑む・・・

  「触らない・・・・・、見つめるだけ・・・・・」
    「・・・・・」
  「綺麗な目だ・・・・・、鼻も・・・額も・・・・・ほほも、そして・・・・・・・ぷっくらした唇も・・・」
    「・・・・・」
 
 男の心理的作戦は経験少ない女にとって刺激的なものだった・・
 全く何もないなんて思ってもいなかったし、そのくせ割りきって許すほど度胸もなかった。
 強引に迫ったり、やらしい言葉で誘われたらハッキリ拒否反応も出せるつもりでいた。
 軽い女と見られるのも嫌だから、楽しみながらも抵抗を見せていたが・・・
 男の行動が考えていた物とは違い、逃げと受け入れが半々の状態で、
 心臓の鼓動が男に聞こえるんじゃないかとおもうほど紅潮していた。

  「お風呂上りでいい匂いがする・・」
    「そう?下呂のお湯は有名ですもんね。。お肌も・・・」
  「ん?お肌も? どうしたの?」
    「・・・お肌もつるつる・・・って・・・」
  「うん・・・わかるよ、首筋が艶っぽい・・・・・・ふぅ〜。。。」 (うなじに息をかける)
    「ぁ。。。くすぐったい。。。」
  「・・・感じやすいんだね・・・手も綺麗だ・・・」
    「そんな事ないわよ、皺も増えて・・・手を見ると年を感じるから・・・」
  「見せて」
    「イヤだって言ってるじゃない・・」
  「爪の形が綺麗だなって思ったんだよ。手ぐらい挨拶と同じなんだから・・・触っちゃいけないの?」
  
 この日の為に念入りに付けてきたマニュキア、それを誉めてもらえれば触らせても・・・
  「うん・・・綺麗な色だね・・・全然年なんて感じないじゃない。こんなにツルツルだし。。。」

 優しく手の甲を撫でる・・・女の引き気味の手に少しだけ力を混める。
 それ以上抵抗しない女の心理を探る・・・。

  「僕の顎、触ってみて」
    「顎? どうして??」
  「いいから・・・僕はどんなに触られたって文句は言わない(笑)」
    「・・・・・?どう?触ったけど・・・何か?」
  「今までね髭を生やしていたんだよ。でもこの旅行をキッカケに長年の髭を落してしまったの」
    「どうして?」
  「運が変わるかな?って思ってね・・・そしたら・・・君とこうして・・・」

 顎の手を男はそっと離した。
 男の右手は女の左手、男の左手は女の右手・・・両方の手が男の手中に握られた。
 その両手を少し強く握って、ゆっくり自分に近づけた。
 女は抵抗しなかった。
 男の顔を見たり目をそらしたり・・・どうしたらいいか迷っている雰囲気だった。

 引寄せる内に態勢のバランスが崩れそうになり、女の正座した膝がだんだん開いてきて
 浴衣の合わせが乱れてくる。

  「あ・・・待って・・・裾が・・・」
 
 手をほどこうとするが男は離さなかった。
 その乱れた裾から素肌が現れる・・・。

  「お願い、離して・・・」
    「いやだって言ったらどうする?」
  「痛いわ・・・手が」
    「ごめんよ・・・手しか触れないから離したくない・・・」
  「・・・どうする気?」
    「どうされたい?」
  「・・・・・いけないわ・・・これ以上ここに居ると・・・」
    「これ以上?・・・まだ何もしていないよ。 何か・・・する?」
  「何を?」
    「ご希望通り・・・。   もう・・・子供じみた会話は止めよう。  大人なんだよ。  覚悟は・・・いいね」
  「覚悟・・・・・そんな・・・そんな覚悟は・・・」
    「うそだ。。。わかってるよ。君の柔らかな胸の鼓動が期待とともに波打っている・・・」
  「期待なんか・・・」
    「期待じゃなければ・・・予測・・・。予測じゃなければ・・・邪心・・・」
  「・・・・・だって・・・・・」
    「ん?なーに?」 
  「だって・・・今日会ったばかりなのに・・・」
    「会った回数と、想い会う時間は関係ない。 この瞬間、この刹那、たった今の2人の気持が大切なんだ」
  「・・・・・」
    「愛しい人。。。」

 後ろ手にしたまま引寄せ、おでこにkissをする。
 女の力が抜けていく。
 手を離しそっと頬に手をあてて・・・。   
 唇を重ねる。
  
   「あ、何をするの やめて・・・」

 その声は荒だった声ではなかった。
 抵抗もするが、逃げもしなかった。
 男はわかっている。
 女は嫌がってはいない、抵抗もしない、逃げもしない・・・フリをしているだけ・・。
 恥をかかせないように・・・少し強引に迫れば・・・落ちる。。。 

  「ぃゃ・・・あ・・・だめよ・・・」
    「綺麗だよ・・・」
  「そんなにじっと見ないで・・・恥ずかしいから・・・」
    「わかった、見えるから恥ずかしいんだね。  ちょっと待ってて」
  
 男は自分のバックからハンカチを取り出した。
 薄いブルーのチェック柄・・・、それを器用に斜めにたたみながら・・・
 女の後ろへ回った。。

  「何? 何をするの?」
    「大丈夫、こうすれば見えないから・・・怖くないでしょ? 恥ずかしくないでしょ?・・・」
  「・・・見えないから・・・怖いわ・・」
    「それは怖いんじゃなくて・・・・・どうされるんだろうと言う気持・・・期待・・・そう思おうよ」
  「・・・こわいわ、やっぱり・・・」
    「僕がいるじゃない、怖くなんかないよ。 
       折角だもの、君を楽しませてあげる・・・今夜だけの・・・不思議な時間を・・」
  「・・・・・不思議な時間・・・・・」
   
 男は冷蔵庫からワインを取り出し、グラスに注ぐ・・。
 その音を感じながら、女は身じろぎしなかった。
 男はそのグラスを女の口もとに持って行き、ゆっくり飲ます・・・。

  「美味しいわ」
    「そう?美味しい?良かった・・・・・僕も・・・欲しい・・・」

 男は女の唇に残ったワインの雫を舐めるように、ゆっくり・・・熱くkissを施した。。
 重ねたままの唇は向きを変えながら、ワインの味がなくなるまで舌がうごめいていた。

  「あん・・・あ・・・はぁ。。。。ぁ。。。」
 
 そのまま倒された女の無防備な姿。
 風呂上がりの浴衣の下は下着のみ、慌てなくてもいつでも剥がす事が出来る。
 その手は決して直接肌に触れないように・・・浴衣の上から・・・見え隠れするブラのレースを・・
 男も焦りを見せないように、目で楽しみ聞いて興奮し、ゆっくり流れる時間を鼓動の波と共に刻んでいた・・。
 部屋に小さく流れる有線の歌詞が、温泉旅情をかき立て 現実と別の世界の堺が滲んで消えそうになる・・。


  「・・・!!」
    「・・・シッ・・・」

 ゆっくり襖が開いて、唇に人差し指を当てて現れたのは・・・
 カラオケルームで騒いでいる仲間から一人抜け出して、休みにきたHNマコト。
 入り口の引き戸を開けた時点で気配を感じ、ずっと聞き耳を立てていたのだ。
 目隠しをした事と、女が受け入れる気持になった事を察知して、じっとしていられず入り込んできた。

 男同士 目でずるく会話を交わし、女の気付かない様子にほっとしながら薄灯りの褥を観賞する。。

  「あ・・・あん。。。」
    「大丈夫だよ・・・怖くないよ・・・僕がいるからね・・・」
  「ええ。。怖くないわ。。。ぁぁ。。。」
    「ワイン・・・飲んで・・・」
  「ええ。。美味しいわ。。。気持良く酔える。。。」
    「いいよ・・・色っぽくて素敵だ・・・、肌がピンクになってきたよ・・・こんなに・・・」

 ゆっくり浴衣の裾を開く・・・女の白い太ももがあらわになり、少し拒むように閉じる・・・。
 閉じながら・・・力は緩む・・・。

 男は黙って交代した・・・。
 マコトは言葉を出さないまま、足の指先から軽いタッチで指を這わせる・・・
 まずは片手で、そして両手で・・・。
 心地よい声を出す女の顔を見つめながら、反応を楽しむ・・・。
 その指が少しづつ・・・少しづつ中心へ向っていく・・・。
 男同士頷きあって、・・・膝を開かせる・・・。 拒まない・・・。
 
 2人の男は両側に位置を置き、それぞれ片手で女の体を吟味する・・。
 レースのショーツを触るか触らないか・・・微妙に近くを刺激する・・。
 腰がうねる・・・触られたい衝動と気恥ずかしい体の動きが益々熱く躍動する・・。

 ・・・脱がさない・・・。
 ・・・女が自分から誘うまで・・・脱がさない・・・。

 じれったい喘ぎが首を振る・・・
 自分で胸を撫でながら浴衣の袷が乱される・・
 女の手が男を捜す・・・触れないじれったさと甘味な思いが 畳を這いずる華奢な指に伝導する。。

  「・・・ん?どうしたの?・・・・・どうされたいの?・・・言ってごらん・・・」
    「あはぁ・・・ん・・・暑いの・・・とっても暑い・・・」
  「うん・・・汗かいてるね。。素敵な下着もぐっしょりだよ・・・。
    「・・・暑いわ・・・」
  「・・・いいの? ・・・・・脱がしてもいいね?・・・もう恥ずかしくないね・・・」

 意地悪な質問を投げかけ、辱められる女の心理を巧に誘導する・・・。
 首を振りながらもだえる腰が催促するように持ち上げられる。
 男は年下のマコトを促して、もう半分乱れて合わされていない浴衣の紐をほどいた。
 袖を剥がす時も、女は自分から腕を抜いた。
 ブラのホックを外しながら、思わず吸い付くマコト。
 男はフッと声を出して笑いそうになった・・。
 その勢いでショーツを脱がそうとした時その手を撥ね退け、年上の男がショーツに手をかけた。
 お腹からお臍から優しくkissをしながら下げていく・・・。
 若いマコトとは違って焦らない・・・。
 
 女は頭を振るうちに、目を覆っていたハンカチが緩んで来た。
 2人の男は知ってか知らずか、気にもしていなかった。
 
 女は閉じていた目を少し開けた・・。
 部屋が薄暗いのと 閉じていた為に陰陽の残像が残る目にかすかに映った2つの影・・・。

  「・・・・・え・・・・・?・・・・・」
    「・・・・・どうしたの?・・・あぁ、ハンカチが・・・縛りなおそうね・・・」
  「まって・・・ねぇ・・・ちょっとまって・・・」

 起き上がろうとした女の肩をとっさに押さえて口付けするマコト・・・。
 
 違う・・・男がちがう・・・女は気が付いた・・・。
 口を塞がれながらもがく手がマコトを押しのけようとしながらも、剥がし掛けのショーツはつま先から外され
 あらわになった女体の肌は、既に喜びの火照りで汗ばんでいた。。

  「え?どうして? どうして2人なの?どうなってるの?」
    「不思戯。。。な出来事。。。初めから2人だったよ。 知ってたでしょ?。。」
  「はじめから??・・・違うは 知らないわ 嫌よ こんなの嫌よ」
    「こんなの嫌? じゃーどんなのがいいの? どうされたい?言ってごらん。。」
  「だから・・・2人だなんて・・・」
   「一人はよくて2人じゃ駄目なの? そんなのおかしいよ・・・。  ほら。。。こうすると。。。
  ・・・こうやっても   ほら。。。    こうしたって・・・2倍気持いいんだよ。。。わかるでしょ。。。」 

 逃げようとする女の裸体を2人の男の手が 指が・・・舌が  激しく 強引に 的確に・・・捉えていく。。
 女の声は 嫌がる叫びではなく 押し殺しながら 抵抗と喘ぎと強引な攻撃にたじろぎながら・・・
 初めて味合う淫乱な行為に陶酔さえ覚えていった・・・。

   「いや・・・あ・・・    いやぁ〜・・・   いやよ・・       
                        ん・・・   はぁはぁ。。  ああぁ。。。」

 一人の男は自分のモノを女の口に含ませた
 押さえこんでいた女の手を静かに離した時その手は抵抗ではなく、そのモノを掴んで口に入れ安い位置に持ち
 どうするかと思われた女の舌は、硬直したカリの周りを器用に這いまわせていた。
 咥えながら喘ぐ声は我慢していた欲しい物を、やっと手に入れた女の歓喜にも聞こえ
 男の腰は、女の動く舌に合わせて上下し、左右し、片手で女の頭を押さえ、片手で胸を弄りながら
 額から背中からじっとりと汗が流れ落ちていた。

 もう一人は当然女の下半身を弄んでいた。。
 濡れ具合を確かめるように、指で丹念に撫でながら広げながら・・・
 太股を押し上げ、見開き
 見慣れてきた暗い部屋のほのかな明かりにそれを浮き上がらせるように・・・
 舌で突起を転がしながら・・・そのくぼみの形を追うように 
 ゆっくり・・・小刻みに・・・大きく・・・じらしながら・・・

 声にならない女のうめきを聞きながら・・・眺めながら・・・位置を交代し・・・楽しんで・・・
 男のテクの方法をお互い垣間見たり、試してみたり・・・。
 女は2人の男のワザ試しになりながらも、気持ちよさに観念した弱い女に溺れ込んでいた。

   「どう? いいもんでしょ・・・こんなに2人に可愛がられて・・・幸せでしょ?。。。」
     「あぁ。。。だめ・・・もう駄目・・・ 体に。。。あ。。。   力が・・・ん・・・   入らない・・・あん。。。」
   「いいよ・・・  もっと感じて  いくらでも感じていいよ・・・  僕達も嬉しいんだからね。。」
 
 前から・・・後ろから・・・横にして     
 起き上がらせて・・・四つんばいにさせて・・・   上から跨がせて・・・
 二人によって2倍の方法が繰り広げられる・・・

 これが・・・   3P・・・  もう知らないとは言わせない
 もう・・・嫌だとは言わせない・・・
 知ってしまったら・・・また・・・     癖になりそう・・・    また・・・襲って欲しい。。。
 嫌がる素振りを強引に・・・
 逃げるその手を捕まえて・・・
 押さえ付ける手荒さが・・・たまらない・・・
 
 嫌だと言っても・・・    おかして・・・・・。


   「イクよ もうイクよ・・・ はぁ・・・はぁ・・・」
     「ああん。。  私も・・・あん・・・私もイクゥ〜。。。  でも・・・でも中には・・・あぁ。。。」
   「大丈夫。。。あ。。。外へ出すからね・・・ 3人一緒にイクんだよ。。。 うっ。。。あうぅ。。。」
 
 ソレは勢いよく女の腹の上に放出された・・・
 熱と汗と粘りと濁り・・・・・
 3人の荒い息使いが密室の中に充満する・・・
 バッタリと倒レこんだ1人の女と2人の男・・・

 一つのアバンチュールに幕が下りた・・・ 
 当然3人だけの秘密の一夜。。。
 想像しなかった、予定通りのアバンチュール。。。

 
   ♪。。♪※。・:*:・°♪★,。・:*:・°☆♪。。♪ !
           ♪。。♪※。・:*:・°♪★,。・:*:・°☆♪。。♪
   「キョウコちゃ〜〜ん♪〜〜ヒュゥ〜〜♪」
     
       ”この世に花がある限り、あなたに見せたい華の香を。。  
        観てやって下さい、誉めてやって下さい、感じてやってくださいキョウコのために
        この日のために こんなに美しく舞う華麗な肌。。。
        その目が 声援が 拍手が キョウコを育てるのです〜〜〜”

     ♪。。♪※。・:*:・°♪★,。・:*:・°☆♪。。♪

    「キョウコ、キョウコ、キョウコちゃ〜〜〜ん

    「綺麗だよ〜〜〜。もっと見せて〜〜〜♪」

    「最初の女はババァだったけど、この子は若いな〜」
    「そりゃそうさ、初めからメインは出さないさ。  しかし凄い人数だな〜」
    「被り付きにいるあの帽子のおっさん、常連のようだな〜。あの子と喋ってるぜ」
    「触れそうで触れないところがじれったいな」
    「おお! すんげえ格好! 大股開き!!」
    「柔らけぇ体だな〜〜。。ちゃんと見えるように手入れもしてある・・・」
    「いいな〜・・・あんな女とやってみてぇ〜」

    「おい・・・」
    「ん? なんだよ」
    「あそこ・・・あそこ見てみろよ・・・、小窓の右側にいるやつ・・・」
    「・・・・・あいつ・・・痴漢か?」
    「いや・・・カップルかもしれんが・・・女は嫌がってないぞ・・・」 
    「女も見に来るんだな。 旅先の好奇心からだろうな」
    「あんなミニはいてるから手が入れ易いし・・・」
    「・・・お!二人で出ていったぞ・・・」
    「ほっとけ、こっちの美人の方がいい」
    「気になる・・・・・。トイレ行ってくる・・・」
    「おまえも好きだな〜・・・。戻ってこいよ!」

 見知らぬ男女は店の出口には向わず、反対側に位置するトイレの方角へ歩んでいった。
 その後を偶然追うようにして向うカリウド・・・。
 二人はトイレの横の細い通り道、薄暗い隙間へ姿を隠した。
 カリウドはそこまで追うわけにもいかず、トイレへ入る事になったのだが・・・。
 なんと・・・その中の窓から男女の影がクッキリ浮びあがっていた。

 話し声は聞こえない。 比較的静かである。 動きも少ない・・・。
 時々影が揺れる。  何をしているのだろう・・・。
 かすかな動揺とともにサッシ窓の鍵を外す。  そして僅かに開ける・・・。
 見えた・・・斜めに体を傾けながら・・・その光景が・・・。

 その顔は30を越えているかいないかの髪の長い女と50過ぎの白髪混じりの脂ぎった体格のいい男。
 静かに行為は続けられていた。
 壁にもたれた女の顔は、恍惚なうつろな目と男を探るような目がこの場限りの情事だと気付かせた。
 いやらしい男の手は女のミニスカートの下に入れられ、こまめな動きと振動を与えつづけていた。
 女の顔色を伺いながらめくり上げられたTシャツの胸は ズラされたブラの下から歪んだ形の乳房が小刻みに揺れて
 揺れに合わせた男の舌が突起した乳首を突ついていた。

   「ん・・・ん。。。あっ。。。」
 
 我慢していたのか、我慢がこらえ切れず漏れ出した女のかすれ声・・・。
 男の指も舌も一層動きが敏速に動き出した。
 カリウドの手は・・・言わずと知れず 自分のモノに触れていた。
 男は生足のスカートを腰まで捲り上げ暗闇に白い腿が浮きあがり、その手は前から後ろからまさぐり続けていた。
 少々乱暴にも見えるその行為は、見ているカリウド自身がその女を攻めているかのような錯覚さえ覚え
 息を殺しながら眺める額は汗にまみれていた・・。

   「あぁ。。。ん・・・・・うん・・・あぅ。。。    ・・・・・あ・・・いゃぁ。。。     いぃ・・・」
      「気持ちいいか・・・・・・・はぁ・・・・   大きな声・・・出しちゃ・・・だめだぞ・・・   」
   「うん・・・あぁ・・・    あぅ。。。」
  
 白い生足の腿に欲望の粘液がつたってくる・・
 ぐっしょり濡れた花弁の壁は、その行為だけを欲する本能の泉・・
 成り行きだけの危険な行為は 男も女も先を考えてはいない・・・
    
 片手で出した男のモノは体の割には貧弱な固まりだった・・
 それでも女の中に入れようと低い腰を精一杯背伸びして入れようとするが、届かないのか焦っているのか
 滑りで的を得ないのか・・・。
 苛立ちが顔に現れる・・・
 その滑りの場所を確認する・・・
 もう一度モノが探す・・・ 
 後ろ向きにさせて腰をつきださせ、その小さ目の固まりは溢れ出る泉の中にスッポリと埋まり込む。
 腰の動きがぎこちないのは、どうもサイズ不足で擦り抜けてしまうもどかしさのためらしい。
 飛び出して行って代わってやりたい衝動をこらえながら、カリウドの指は動く・・。

 男は女を振り向かせ肩を押し下げて自分のモノを咥えさせた。
 少し抵抗した女だったが 火照った体の情がそれを受け入れた。
 知らない女の唇は、その固まりを自由自在に転がりしゃぶり、
 やっと満足した男の顔を見ながら片手の中指は自分の花弁の中に入り込んでいた。
  
    「よーし・・・よーし・・・イ・・イクゾ・・・・・イクゾ〜!」
  
 控え目な男の声は女の長い髪を撫でながら・・・・・いきなりモノを口から外し
 女の顔を目掛けて弱々しい流れと共に頬に流れ落ちていった・・。
 驚いた女だったが、馴れているのだろうか・・・騒ぎもせずゆっくり手の平で拭いながらその匂いをかいでいた。

 早くその場から離れたほうが・・・
 そう思ったカリウドは同じく発射し終わったモノをトイレットペーパーで拭き取り、足早に舞台へ戻っていった。

   ♪☆;:*:;☆;:*:;☆♪"☆;:*:;☆;:*:;☆♪
  ♪”BOY。。。SEXY BOY。。。Aa〜。。  Oo〜  sexy boy。。。。。♪
    「右から二人目の人がいいわ〜」
      「私はあの黒人が好み。。。」
  
 女性だけを集めた会場の熱気
 ここは男性ストリップクラブ。 と言っても全裸になる事はない。 
 勇姿の女性達がチケット購入と同時に3000〜5000円分の1,000円札を握り締めて
 体をくねらせながら会場を回るお気に入りの男性の下半身に札を挟み込むのである。
   
 初めはスーツ姿で現れたダンサーがダンスとともに徐々に衣服を脱ぎ捨てていく。
 白人・黒人・黄色人・・7人の若い男のハチキレンばかりの肉体に女たちが狂喜する・・。
 筋肉が揺れる、汗が光る、髪が貼り付く、目が語る・・・
 Tバック・ブリーフだけの肉体は、微妙な動きと怪しい盛り上がりに、女たちの目が凝視する。。

 リズムに合わせて目の前に突き出される股間の存在。慣れた人は好みの男性が側へ来るまで素知らぬ顔。
 驚きと感激で、思わず手を出してブリーフに挟み込む・・・。
 お礼のkissが頬に触れる・・・その瞬間男の匂いが陶酔を誘う。。
   
 思わず覗き込みたくなる衝動を押さえて、好みの男性を手招きしてブリーフへ・・・
 なんとも怪しげな光景である・・・。

    「わぁ〜、触っちゃったわ〜〜!」
      「彼ったら”僕はサムだよ”って教えてくれたわ〜〜♪」
    「こんなところ普通じゃ来れないわよね〜」
      「そうよ〜。家族に内緒にしなきゃ〜(笑)」
    「体が熱くなっちゃった・・・」
      「あんな肉体に抱かれたら。。。トロケそうよね。。。」
   
 男も女も夜更けの楽しみを終えてバスに戻り、体験報告で盛りあがる
    「え〜〜!うっそぉ〜〜・・・」
      「マジ〜〜?」
    「そんな若い子が〜?」
      「触ったのかよ〜〜! 俺のも触ってくれ〜〜(笑)」
 賑やかな会話の中で・・・・・興奮した男女の心と体・・・。
 そのまま眠りに付くはずがない・・・。

    「オイオイ、このまま部屋で大人しく寝ろってか〜?」
      「じゃー、どうするのよ・・・」
    「どうするったって・・・・・どうするんだよ・・・」
      「集まって酒でも飲みなおすか」
    「そうね、酔いも冷めちゃってるから飲もうか」
      「よーし! バーが空いてたらバーへ。カラオケルームでもいいしな」
    「滅多に集まれね〜んだ。 寝てる暇なんかね〜ぞ〜(笑)」

 夜遊びメンバー7人・・・何が始まるか・・・。

    「なぁ、マリオンは何処に居るんだ?」
      「宴会の後、姿が見えないよね」  
    「俺達は出ちゃったからわからないけど、どっかで飲んでるのかな〜?」
      「探してこようか」
    「おお! 寝てたら起こして連れてこいよ」
      「わかった!見付けてくるよ」

 ストリップから帰ってきた7人、深夜11時 カラオケバーのワンボックスに集まって猥談が進む。
 舞台上で繰り広げられた光景を思い出しながら、女性にも説明し始める。
 興味津々で聞き入る女性達に男も手振り身振りで沸き上がる・・。
  
 そのころマリオンを探すHN コノハ。 1階バーから2階へ上がる階段とエレベータのあるフロアー。
 エレベーターの上がりスイッチを押して、ふと目を移したその先に・・・。 裏庭園へつづく渡り廊下。
 男女の影が庭園奥の茶屋の軒下にうっすらと動く・・・。
 顔は見えない・・・ガラス戸に仕切られて声も聞こえない・・・しかし・・・誰かが居る。。
 エレベータのドアが開く・・・中の灯りがコノハを照らしつける。 当然庭の男女はコノハに気が付く。
 乗らないのは不自然なのでそのまま乗りこんで、目的の3階は押さえず2階へ・・・ そこから階段で静かに下りた。
 誰だか確認したかった。昼間ならば問題にもしないが、こんな夜更けの裏庭の男女。知らぬ顔するにはもったいない。

 居た、そこにまだ居た。 二人とも浴衣姿。 軒下の濡れ縁に腰掛けて肩を寄せ合い喋っている。
 夫婦なら部屋で話すだろう・・・カップルなら堂々として場所を選ばないだろう・・・しかし・・・。
 コソコソ隠れて夜更けに会う理由がある男と女。。。
 オフの仲間だ・・・そう直感した。
 少しづつ近付いて大きな観葉植物の植木鉢の横に身を隠して様子を伺っていた。

 女の顔を覗き込みながら話しこむ男。 顔を伏せたり仰いだり・・・と惑っているような女の素振り。
 だんだん目が慣れてきて二人の動きが鮮明になってきた。
 男の左手は女の肩に回され 右手は女の手をしっかり握り締めている。
 話しながら頬にkissしたり耳打ちしたり・・・親密さは増していた。
 
 その手は素早く女を引き付けて抱擁を始めた。 熱い接吻と共に浴衣の柄が重ね合わさる。
 女の手は受け入れるが如く男の背中に絡みつく。
 女の胸元に滑り込んだ手は、浴衣の合わせを乱すように片肌が脱がされていた。
 柔らかく暖かであろうその胸に顔をうずめた男の興奮。天を仰ぎながら小さく喘ぐ女の唇。。
 女のもたれかかった後ろの木戸が鈍い音を出しながら、庭の木々や風のざわめきと共に不思議と溶け込んでいた。
 
 濡れ縁の上に不自然な姿で横たえた体。 
 大胆にはなれない気持ちと場所の狭さが中途半端な姿勢になっていた。
 しかし、それが乱れた浴衣の色気と魔性が重なって
 静な女を無理矢理犯す情景が気持ちの盛り上がりに一層の挑発を与えていた。

 不自然な形に添わせた不自然な体位・・・。 そして動物的動きと本能的まとわり・・・。
 手の動き足の動き・・・踏ん張りとしなやかさ・・・。
 力強い腰と・・・緩やかな波のうねり・・・。
 見た事も聞いた事もないその光景は、コノハの体を金縛りに合ったように腰が砕けて座り込んでいた。
 聞こえるはずがない声が耳元でつぶやいている・・・。
 想像の喘ぎがガラスを越えて聞こえて来る・・・

   「コノハ? 何やってんだ〜そんなとこで・・・」
     「・・・!・・・あ・・・、あの〜・・・」
   「ちっとも来ないから来てみたんだよ。 マリオンは?」 
     「あの・・・アソコで・・・」
   「ん? なに? アソコって?」
 目を向けたその場所に、二人の姿はなかった・・・。
   「何か居たの? お化け?(笑)」
     「・・・・・・・。いなくなっちゃった・・・・・。」
   「酔っぱらって夢見てた? こんなところで座り込んでたら変だぞ。 行くぞ」
     「あ、でもマリオンが」
   「もういいよ。戻ろう。」
     「でも・・・。まだ部屋を見てないよ」
   「今見てきたよ。誰も居なかった。家族組はもう寝てたし、良い潰れた男たちも寝てたよ。
    でもマリオンはいなかったみたい。バーへ戻ろう」

 さっきのは夢ではないはずだ。 酔ってもいない。 確かにこの目で見た。 しかし・・・消えていた・・・。
 カラオケバーに戻った二人・・・そこに・・・。
   「おぉ!コノハ! 何処行ってたんだよ〜〜! マリオン来てるよ〜」

 温泉宿の終わりのない時間。 
 深夜まで営業しているカラオケバーにはオフメンバー以外の客の姿もちらほら見える。
 誰が歌っているのだろう、渋い男の歌声が響いてる中 入り口から一番奥に賑わう仲間達。
   「ごめんなさーい、私を探してたんだって〜?」
     「そうですよーマリオン、何処にいたの〜?」
   「温泉入りすぎて湯あたりしたみたいで、外散歩してたのよ。。」
     「外?一人で?」
   「ううん、庭だから大丈夫。さっき気分良くなってロービー通ったら、ここに気が付いて入って来たのよ」
     「庭にいたの? 何処の庭?」
   「・・・何処って・・・どうして? 庭に何かあるの?」  
     「あ・・・ううん。 さっき庭で人を見かけたから・・・マリオンかなって・・・思って・・・」
   「そう?・・・・・さーてどうかしら・・・。  あ、何飲む? ジン? カクテル?」 
 顔が分からなかったからなんとも言えないが、まさかと思いながら疑いの目を向けるコノハの視線。
 そんなこと気にもしていないように笑顔で話しつづけるマリオンの浴衣姿。
 賑やかな会話の中、気を使わない気を許し合った男女のオフ。 お酒も入った真夜中の大人の会合。

   「マリオン。。。」  
 耳元でささやく一人の男。 肩に手を回されて驚きながらも・・・。
   「ん? なーに?」
     「一緒に唄おうか。。。」 
   「デュエット?・・・・・いいわよ・・・・・何唄う?」
     「うーーん・・。   ・・・堀内孝雄と桂銀淑の・・・」
   「”都会の天使たち”?」
     「そう! 唄える?」
   「知ってるほどでもないけど・・・リードしてくれれば・・」
 
 暗い店内の小さなステージ。 足もとの七色のライトと天井からのスポットライト。
 二人のシルエットが浮びあがるロマンチックムード。
 イントロと共に男の手がマリオンの腰にまとわり付く。。
   「ヒュ〜〜〜! 羨ましいぞ〜〜! もっとイケ〜!」 
      「やめろ〜。その手を離せ〜!」
   「どっちなんだよ、ハッキリしろよ(笑)」
      「やるのは俺だ〜、他は許さん!」
   「静かにしなさいよ。 いい雰囲気壊さないで・・・」 
 
 ♪♪〜この都会に眠りの天使たちが〜

   「マリオンを落とすことは出来ないかな〜」
      「なーに考えてるんだ、おまえ」
   「いや・・・、ちょっと・・・ふっとそう思ったのさ・・・」
      「いきなりじゃ無理だろう・・・心理作戦から考えなきゃ」
   「作戦か・・・」  
      「ばかね〜。男女の恋愛に作戦なんか関係ないわよ」
   「ん? どういうこと?」
      「一目あったその日から・・・か? フィーリングってヤツ?」
   「それもそうだけど・・・一夜限りの出来事なら心理作戦も必要かもしれないけど、
    ずっと自分だけの物にするなら それなりに気持ちが通じ合う話を進めないと・・・」
      「自分だけの物には出来ないだろう。 結婚してるんだから・・・」
   「そう言う事じゃなくて・・・次元が違う世界だよ・・・」
      「ん〜? 次元〜? なんじゃそれ・・・。」
   「遊びか本気か・・・」
      「遊びじゃ落ちないだろう。 かと言って本気じゃ危ないだろう」
   「どうしたいんだよ」
      「抱いてみたいのさ」
   「抱いてどうする・・・その後は・・・」
      「奪うのか?」
   「旦那から?! まさか!」
      「あほか! そこまでやるかよ。 ただ・・・あのままじゃもったいないと思ったのさ。。。」
   「うん・・・それは言える。 もったいない」
      「ばかねぇ、あんた達。  もったいないか、なんとかしたいと思うのは男の気持ちでしょ。
       マリオン自身の気持ちが一番問題じゃない。 誰に落ちたいか・・・マリオン次第よ・・・」
   「聞いてみたら? マリオンに。。。  このままでいいの?   って・・・」

 ♪〜〜・・・・・・・。 拍手〜〜〜〜パチパチパチ〜〜〜!
   
   「良かったわ〜〜〜。お上手よ〜お二人さん♪」
      「ふふ。。。ありがとう〜。 久しぶりに唄って恥ずかしかったわ〜」
   「腰の手はイタズラしなかった〜?」
      「モゾモゾ動いて、くすぐったかったわよん(笑)」
   「きゃ〜〜、H〜〜♪」

 時間は過ぎる 夜がふける 閉店時間も迫ってきた。
   「さーて、そろそろ寝るか〜」
      「うん・・・もう2時だぞ。 眠てぃぞ〜〜」
   「解散だ。朝が来れば帰宅準備だ」
      「そうね、じゃーやすみましょう。。。」

   「マリオン」
      「え?」
   「一緒に・・・寝よ。。。」
      「・・・・・酔っぱらいは早く寝なさい」
   「シラフだったら・・・寝てくれる?」
      「・・・・・考えておくわ(笑)」
   「微妙な答えだな〜。 もう酔いは覚めてるんだけど・・・」
      「お・や・す・み・・・」

 それぞれがそれぞれの部屋へ・・・。
 途中立ち止まって話す姿。 エレベーターを使わず階段を選んだ姿。 
 割り当てられた部屋と言っても・・・人数が合わない。
 居るはずの人がいない・・・違う部屋の人も混じっている・・・。
 詮索はしない。 誰と何をしようとも詮索はしない・・・。
 自分の責任の上で行動する大人の旅行。
 危険を察するのも・・・逃避するのも・・・受け入れるのも・・・交わすのも・・・本人の意志。
 マリオンは・・・・・ひ・み・つ。。。

 『 温泉一泊 暗黙のオフ会 』 
 たった一泊のオフ会で、それも初めてのオフ会で、まさかの出来事の連続。
 あってはならない、あるかもしれない秘密の温泉旅行。。
 
 あなたなら期待しますか? 違う世界のことと笑いますか?
 絶対有り得ないと確信出来ますか? 自分は大丈夫と・・・強い意思を持てますか?・・・。
 
 この物語は・・・ここでおしまい。。 
 朝の話、帰りのバスの中・・・ご想像下さい(笑)

                                        第四話 完



 ※ 一月から綴り始めたオフ会物語。 もう、梅雨に入ってしまいました。
   いろんな想定が浮んで来たり、想像が膨らみ過ぎて文字にすることが難しかったり(笑)
  なんとかキリをつけて、夏バージョンに入りたいと思います。。

  いや〜〜。。。実際オフ会も考えているんですが、小説のようなことは”絶対!全く!”無いことを誓い。
  ・・・・・私だけ誓っても、他の人は知りませんが(爆)

 今年中に・・・9月のHP開設一周年記念と題して、『マリヤン・オフ会』決行しようかな・・・と思っております。
 そのお知らせは、追々トップにでもお知らせ致します。

 是非。。。是非ご参加を頂きます様 お願い申しあげます。      。。。マリヤン。。。'01.6.12

 


  第五話  『人妻パート通勤電車物語』

 何年ぶりかしら・・・。
子育てにひと段落して社会へ飛び出す期待と興奮。
独身時代のOL気分とはちょっと違う今の私。
時代の変化や流れについて行けるかしら・・・。
若い女子社員に馬鹿にされないかしら・・・。
怖い上司にどやされないかしら・・・。
 いろんな不安が湧き上がりながら、年齢制限ギリギリで採用された中小企業(株)○○○。
通勤時間30分以内・・・そんな理想通りにはいかず、電車通勤一時間のラッシュを味わうことになってしまった。
梅雨時のジメジメを避けたものの、夏の通勤はエアコンを感じる余裕さえない混み様だった。

 9時出社。パートと言えど時間に融通の利かない会社だった。 
女子事務員の正社員もいるが経費節減の為であろう 同じ仕事をパート扱いにして賃金を減らす考えだ。
それが好都合してこんなおばさんでも雇ってもらえた訳だ。
事務一般、電話受け付け、伝票整理・・・。 面接では親切丁寧に指導すると・・・。 
若い子は文句を言ったり融通が効かないので やる気のある主婦なら歓迎だと人事担当が言っていた。
そんな安心から夫も子供も快く賛成してくれて、社会を見る目 人との触れ合いを求めて一歩踏み出してみた。

「おはようございます、今日から採用されました藤堂 梨絵(とうどう りえ)と申します。 よろしくお願いします」
   「みんな頼むよ。藤堂さん 分からないところは誰でもいいから聞いて、みんなも教えてやってくれ、じゃ!」
「お願いします・・・。」

愛想笑いの社員達の中、早速手渡された伝票をPCエクセル内に登録せよとの指示。
 ”え!電話受け付けじゃないの? ・・・お茶でも入れようかと思っていたのに・・・。いきなりPC・・・”

「藤堂さん、これもお願い。 F3のファイル開いて 同じ項目の昨日の日付のところにこの数字を入れておいて」
   「あ・・・はい・・・F3・・・」

戸惑っている暇はない、すぐ目の前の開いているPCの前に座ってF3を開こうとする・・・。

「それだめ! あっちのPC使ってよ。 聞いてからやってよね。 勝手に触らないで」
   「すみません・・・。あっちのPCですね・・・」
「ねぇ、早く入力してくれないと次進まないんだけど」
   「はい・・・すみません・・・」

 ふぅ〜・・・覚悟していたものの、矢継ぎ早の支持にウロウロ。
そんな私をじっと見つめている一つの視線。 南側の太陽が降り注ぐ大きな窓。
こちらを見ている姿は、逆光線のシルエットとなり その表情を知る由もなかった。
 なんとかPCの操作は出来る。 しかし入力してあるソフトの種類やファイル名が分からない。
斜め右に座っている30過ぎだろうか・・・女子正社員に尋ねてみる。

「それならデスクマットの下に基本ファイル一覧表が挟んであるでしょ。それで探して見て」

 親切ともあっさりとも取れる答えに軽く頭を下げて見る彼女は 何事も無かったようにキーを打ち続けている。
彼女を見たその視線の範囲に入ってきた別の視線。 南の窓のシルエット。
見ている、私を見ている・・・。 思わず支給された制服のタイトスカートの膝に力が入った。
 仕事に夢中で膝が離れていたかもしれない。 そんな動きを察して横を向いたシルエット。
確か・・・室長。 朝の挨拶で目が泳いでいた私は、頭を下げただけで言葉を交わしたことがまだない。
後でちゃんと挨拶しなければ・・・そんな気持ちでキーボードに集中した。

 お昼、緊張と覚えなければならない仕事と人の視線に囲まれながらあっという間に過ぎた3時間。
渡された仕事にキリが付き、ふと周りを見渡すとそれぞれランチタイムに出かけるもよう。
どうしたものかと戸惑っていると・・・

 「ねぇ、お昼はどうするの?」
   「あ、いえ 何も用意してこなかったんですが・・」
 「よかったら一緒に食べに行く? 近くに美味しい中華屋があるんだけど」
   「是非一緒にお願いします。」
 「いいわよ。 その前に・・・室長にお茶を持っていってあげて。 いつも愛妻弁当なのよ」
 
先ほど基本ファイルのことを教えてくれた 木村 里子 だった。
言われたように湯沸室へ行き、教えられた湯呑に香のいい濃い目の熱いお茶を注いでデスクへ向かった。

 「お茶をお持ちしました」
書類が散乱するデスク。 こぼしたら大変になることを思い、何処へ置いたらいいか考えあぐんでいると・・
 「君か、今日からパートで入ってきた・・・」
   「はい、申し遅れました。 とうどう、 藤堂 梨絵と申します。 よろしくお願いします」
 「うん、藤堂さんか。 見てたよ仕事ぶり。 なかなかテキパキ動いて調子いいじゃないか。 まぁ、頑張りなさい」
   「はい、ありがとうございます。   あのぉ〜・・・」
 「ん?なんだね?」
   「お茶は何処へ・・・」
 「あ、そうか。お茶ね・・・   ここへ置いてくれ。 ありがとう」

 40代後半かしら・・・。 優しい目をした怖くない上司。 ここなら上手く勤められそう・・・良かった・・・。
そんな安堵感で木村の待つ出口へ向う後姿を、上から下まで舐めまわすように薄笑いを浮かべながら送る視線。
その視線に気付くはずがない藤堂梨絵・・・。 
 デスクに置かれた一枚の書類、親指の腹を舐めながら捲るように取り上げて目を通す・・・。
   ”○○区○○町。交通機関○○鉄道利用。約1時間。家族構成・・・・・・・・”
 ・・・・・○○鉄道利用・・・・・。 つぶやく口元にタバコの煙が真実の姿をうやむやに忍び隠していた。

 5時、初出勤の1日が無事終了した。
周りの社員や、前から来ているパートの人とも話が出来るようになり、顔と名前を一致させるのにもうしばらくかかるかな・・・
なんて思いながら帰り支度にロッカールームへ向う途中。
 
 「ご苦労さんだったね。御疲れ様」
   「あ、どうもありがとうございました。お蔭様で皆さんに親切にして頂きとても嬉しいです」
 「良かった。気を使わないいい連中ばかりだから、頑張りなさいよ」
   「はい、家族にも嬉しく報告できます」
 「君、○○線に乗ってるの?」
   「はい、通勤ラッシュを味合わせてもらってます(笑)」
 「そうか、なれるまで大変だけど・・・。何時の電車?」
   「7時52分です。・・・・・何か?」
 「いや、時間帯によって空いてる時もあるからね。 その時間は・・・混むね」
   「はい・・・。 じゃ・・・これで失礼させて頂きます・・・」

 疲れたけど、遣り甲斐のある仕事と感じいい人達に囲まれてホッとした初日だった。
帰りの電車は朝ほどの混みもなく、途中から上手い具合に座れたこともあって、ウトウトしてしまう乗り心地。
 家路を急ぐ途中のスーパー。 今日は記念日、そんな気分で牛の上ロースを3枚。 赤ワインと共に乾杯しよ♪
まだ明るい西の空。 いつも見る景色なのに いつもと違った新鮮な景色。 足取りはとても軽かった。

 やる気満々で迎えた2日目の朝。昨日と同じ7時52分の電車内。
シルクジョーセットの柔らかいロングスカート。チョット開きぎみのブラウスの胸元。
何かを感じたのは 電車が発車してまもない時だった・・・。

 女子高生の甲高い笑い声やヒソヒソ話しが 蒸し暑い車内の熱気に追い討ちをかける。
エアコンの涼しさは頭の先に少し感じるだけ。 周りと密着された背中も肩も体温の上昇でうんざりしていた。
幸い自分の正面は座席の位置。景色を見ながら気を紛らわすことが出来る。
 揺れる度、踏ん張る足元が動く度、足の間に他の足が進入してくる。 
それぞれ倒れないように足を開いて立っていることはわかるのだが、どうしても故意に進入してくるような感覚である。
その足は後ろからさし込まれている。自分の足がだんだん開かれて行く。これ以上開いては不自然に思えるくらい・・。
前の座席の初老の男性は新聞に夢中で、その人の足を踏んではならないと思い、その足を避けて跨いだ状態になってしまった。
 
 触っている・・・右太股の後ろに固いものが触っている。 会社員風のスーツ姿の男性のセカンドバックの角。
揺れる度にツンツンっと腿に当る。それが気になり腰の位置をずらした。
 しかし、それがそのセカンドバックを持つ男の手の甲がお尻を触る形になってしまった。
自分からずらした位置なのに嫌がる態度もおかしい・・。しばらく様子を見て、相手が気が付けばどかしてくれるだろう。そんな安易な思いで居たのだが・・・。
 
 混み合っている・・・後ろも横もふさがっている。 つり革を持っている自分はそれ以上ずれないし前にも出られない。
手の甲が押しつけられる。揺れと一緒にセカンドバックを持ったまま柔らかなお尻を撫でている。
それでも偶然の意識のない行動なのだと思うようにしている自分。意識がそこへ集中した。
 その動きは電車の揺れだけの動きとは明かに違う動きに変っていった。
お尻の中央部、つまり割れ目に向って移動し始めた。 どうしようか・・・どうしようか・・・。そんなことが頭いっぱいになった。

 開きぎみの足は その手の甲がスッポリ入り込むほど開かれていた。
スカートなので前に座っている人の目には入らない。 モゾモゾ嫌がる動きをする自分の姿が意味のないものに見えてしまう。
 少し振り向いて顔を確かめようとしたが、それらしい男は反対側の窓を見て確認できないし、周りの視線が私とぶつかり合い睨まれる形になってしまった。 
 微妙に上下している。 押したり引いたり・・・中指の間接が浮きあがって少しだけ浸入してきた。思わず腰を前に出した。
ゆっくりもとの位置に戻した。 抵抗をした事で諦めると思っていた・・・が・・・そう簡単に諦める手ではなかった。
 今更声を出しても・・・あと15分・・・なんとか抵抗しながら時間の経つのを待とう・・・そんな思いで外を眺めていた。
その思いが伝わったのだろうか・・・相手の体制がどう変わったのか・・・バックを持つ手の動きではない。完全に手がフリーになっている事がわかった。
 それぞれの指の動きが伝わってくる。 流石に手の平は向いていないが指の一本一本に神経が働いている。
戸惑いながらも その指の動きを確かめている自分・・・。受け入れたわけじゃないけれど満員なんだから仕方ないじゃない・・・という言い訳を思い浮かべながら・・・。 だんだん熱くなってくる顔が手の動きを歓迎しているような錯覚になってきた。
 
 とある駅で女子高生達が7〜8人下車していった。いく分広くなった車内。ピッタリくっ付いていた体に隙間が出来る。

その後指の動きはなくなり またバックだけが体に触っていた。
 ”よかった・・・やっと止める気になったのね、バックぐらいなら仕方ないわ。最初からじっとしてれば良かった”
そんな気持で1時間あまり、2日目の通勤ラッシュ。 我先に下りるホームではその手の男を確認するまでには至らなかった。

 会社での仕事は忙しい分時間の経つのも早かった。 電話での対応や来客の接待、営業員への電話連絡 様々な業務が展開され 活気付く社内の雰囲気にも慣れ始めた頃。。

  「藤堂さん、ちょっと」
 室長補佐の 河崎 良治 が手招きした。
  
   「あのね、これ・・・。
 差出された書類に目を通しながら説明を受けた。
  「これを計算しながら表にして、プリントアウトしてもらえないかな」
    「はい・・・。いつまでに?」
  「出来れば今日中に・・・」
    「今日中?」
 東の一部の壁に書類棚が並べられ、その上に無造作に掲げられた丸い時計・・・4時10分。
  「2時間もあれば出来るだろう」
    「2時間ですか・・・」
  「いいかな?」
   
 いいかな?と聞かれても、やらないわけにはいかない雰囲気だった。
"私は5時までです"・・・と言いたかったけど、入って早々我侭も言えないか・・・そんな気持で仕事を引きうけた。
1時間ぐらいの延長なら多少夕食が遅れても大丈夫かな・・・それに残業もつくし・・・。
 
 引き受けた2時間の仕事・・・そんな訳にはいかなかった。5時までは普段の仕事もまだ済ませていないし
その間にも電話や来客、先輩のコピー支援・・・そんな細かな仕事も押していた。
 バタバタとやるべき仕事をこなして、やっとソノ仕事に手を付けたのが5時を回っていた・・・。
 
  「あら、藤堂さん残業?」
 パート仲間の先輩から哀れみとも声援とも取れる言葉が投げかけられた。
  「残業させられるって事は、認められてるからよ。頑張ってね。おさきに〜〜」
    「あ、はい。がんばります〜」
 明るく対応したものの、私服に着替えて帰って行く姿を見ると羨ましくもあり・・・。
残っているのは、一部の正社員だけ・・・女子社員もそろそろ片付け始めている。
 "引き受けた以上やらなきゃ・・・"
 書類全体に目を通し、チェックして確認して・・・PCへ向った。
何の統計なのか、大きな数字に面食らいながら早くやってしまおうと集中する。
 入力数字を間違えないようにチェックする。
 画面を見つめる目が乾いてくる。
 同じ姿勢と腕のキープで背中が張ってくる。
 キータッチを止めないまま、体をひねってストレッチを試みる・・・。

 「わるいね・・・疲れただろう・・・」
 ふいにかけられた言葉に一瞬指が止まり声の方向に目を向けると、仕事を与えた川崎だった。
手には別の書類を持ち片手で眼鏡を触りながら近付いて来る。
 「いいえ、仕事ですから」
 そう言いつつ周りを見ると誰も居なかった。時計は6時半を過ぎていた。
 6時を過ぎた頃家に電話を入れておいた。 中学生の娘はそんな状況を珍しがって快く夕食準備を引き受けてくれた。
そんな安心感もあって、まだ半分ほど残っている書類もテンポ良く進める事が出来た。
 「肩こりは大丈夫?」
   「あ、はい大丈夫です」
 「・・・・・手早いね・・・・・頼んで良かった」
   「ありがとうございます。あと・・・1時間もかからないと思います」
 「そうか・・・。明日朝1番で使いたかったから助かるよ」
   「はい」

  なぜだろう・・・なぜじっと見ているんだろう・・・。
自分の席に着くか、別のことをすればいいのに、なぜ少し後ろで見ているんだろう・・。
任せた仕事が気になる? 何か言いたい事がある? 気になって集中できない・・・。
 その目を意識して手元が狂い出した。 ミスが目立ってきて手が止まる・・・。
 「すみません・・・なんだか・・・」
川崎の目は笑っているのか怒っているのか分からない表情だった・・。
 「いいよ。 そこは・・・こうしたらどうだろう・・・。 ここには・・・これが適当かな。 この数字はこっちにして・・・」
時々内容を訂正したり指導したり、ミスを見つけたり・・・。 疲れも出てきた頃。
 
 「・・・・・手を・・・」
   「え?・・・手?」
 「腕を貸してごらん」
 意味も分からず川崎に出した右腕。 
側の椅子を横に持ってきてゆっくり腰をかけ 手の平の親指と小指の間に自分の両小指を入れ
手の平を広げるようにして親指で小気味良く指圧し始めた。
手馴れた手付きと気持良さで軽く目を閉じてその行為に甘えてしまった。
川崎の手の動きは手の平から手首 肘 ニの腕と上がって来る。
事務服とは言え夏用の半袖ブラウス。ハッキリ言ってしまえば生腕を触られている。
時折くすぐったさで顔をほころばせ肩をすぼめる仕草も。。
 「どう? 気持いい?」
   「ええ。。。あ、はい!」
 「いいよ、緊張しなくても。 リラックスしてなさい。 これでも昔はスポーツトレーナーだったんだから」
   「はぁ、だからマッサージがお上手なんですね。気持いいです」
 「よかった。僕が頼んだ仕事のために体を壊してしまったらご主人に申し訳ない。しっかりほぐさせて頂きますよ」
   「川崎さん面白い方ですね。良かった」
 「あはは、顔が怖そうだから敬遠されてたかな?」
   「そんなことは・・・。あ・・・まだ仕事が終っていませんから・・・」
 「そうか・・・。終ってからしっかりマッサージしてあげるよ。だから頑張って」
   「はい、やってしまいます」
 「そのまま続けて・・・」
 そういいながらキーを叩く背中に回って肩まで下がる髪を掻き分け首筋をマッサージし始めた。
 「川崎さん、それは・・・」
   「いいよ、気にしないでやってて。手が暇だから動かしてるだけ・・・」
 奇妙な光景だった。仕事をする女の体をマッサージ・・・。このままで良いものかどうなのか・・・。
気にするなと言われた以上、気にするのも・・・。 気にせぬふりしてキーを叩く・・・。

 「お疲れさん!終ったね」
   「はい。プリントアウトも終りました」
 「約束どおりマッサージしてあげよう」
   「いいですよー。川崎さんこそお疲れなのに私ばかり申し訳ないから・・・」
 「だめだめ、今後もいっぱい仕事頼むんだから、今日の疲れは今日取るの」
 そう言いながらさっきの手の平マッサージから始まってニの腕 首筋 肩・・・丁寧にほぐして行く
 「足ここへ伸ばして」
   「足? それはいいです」
 「だーめ、座りっぱなしでむくんでるよ」
   「ええ!むくんでますか〜?」
 「ほら、見せてごらん」
 タイトスカートを気にしながら、男の腿に乗せた右の足。 パンプスを剥ぎ取って足先の甲からアキレスケン。
なんとも言えない気持良さで目を閉じて・・・膝の開きも忘れてるほど気が緩んでいた。
同然そんな姿を男はどう思っているのか、手は止まらなくとも心と目線は・・・・・。
 「ほんとはストッキングないほうが効くんだけど・・・いやでしょ?」
   「そうですね・・・そこまでは・・・」
 「機会があったら全身やってあげるよ。 これは真面目な話しだからね」
   「はい、ありがとうございます。今日はいろいろご指導ありがとうございました」

デスクを整えてから着替えのためにロッカールームへ向い事務ブラウスを脱いでハンガーにかけた時。
 「藤堂さん」
川崎がロッカールームへ入ってきた。
 「あのねぇ」
   「あ、今だめですよ」
 「え?何がだめ?」
   「だから、まだ着替えを・・・」
Tシャツを取ろうと手を伸ばしたその姿は、薄いピンクのレースブラがふっくらと胸の谷間を包み込んでいた。
慌てた仕草で手を添えようとしてTシャツを下に落とし、しゃがみ込む姿に声をかける川崎。
 「すまんすまん。着替えてたんだね。どうもいかん。女子スポーツ選手の着替えを見慣れている僕は何も考えなしで入って来てしまった。悪かったね」
 そう言いながら戻って行く足音・・・。 ちょっと気配を確認してからタイトスカートも脱ぎ下着だけになった体。
しっとりと汗ばんだストッキングをもう1度手繰り寄せて整えて、ブラの中も形良く整えてロッカーの扉に備えてある鏡に顔を写して見る。
 あとは家に帰るだけにしても、まだ電車に乗らなければならない。 Tシャツを着てから口紅を付けようか・・・
その前にスカート履かなきゃ・・・そんなことを思いながら下着姿から1枚づつ増やしていく・・・。
その姿を、その一部始終を見つめる目・・・・・。 梨絵は気付いていなかった・・・。

 順調に仕事をこなせるようになり、朝の満員電車にもなれた頃。
その日は朝から曇り空。一雨きそうと思いながら急ぎ足で駅へ。
傘を持たなかったので会社までは何とか降らないで・・そんな気持でかけ込んだドアの入り口。 
丁度男と向え合わせになる格好でドアは閉まった。
 視点をどこへ持っていこうか・・・男の幾何学模様のネクタイが目の前にある。
紺地に同系色の細かなラインにクリーム色の動物を象ったような絵柄・・・。
顔を見たかったが・・・あまりにも近過ぎて左右に動かすのが精一杯だった。

 背中のドアの冷ややかさと反対に胸元から腰にかけての熱気が額と首筋にうっすらと汗が滲んで来る。
右手でショルダーバックを抱えながら、左手は胸の下辺りで交差する。
 男は覗いていた。 開いた胸の谷間から見るともなく見える柔らかな膨らみを。。
そして・・・揺れる振動で腰の辺りが擦られる。 仕方がない、混んでいるのだから仕方がない・・・そう思いながら
ふと右奥に見える女性の表情・・・。妙な顔つきである。気分が悪いのかな?・・・違う、悪いのではなく・・・感じている顔・・・。
 薄目を開けて窓の外を眺めながら、時折目を閉じる・・・。少し喘ぐように唇が少し開いたり息を吸い込んだり。。。
周りで気が付いているのは・・・梨絵だけ。 いやがっていない女の顔をじっと観察していた。
 後ろの男だろうか・・・横の男だろうか・・・女を触っているであろう男の正体は定かではない。
女は・・・20代後半とみた。黒のタンクトップ・・・しか見えないが触りやすいスカート?かしら・・・。
 開けた唇が声を発しないまま少し動いている。 目線は正面の窓だけど、頭の中は触られているところに集中しているようだ
 想像してみた・・・どんな気持なんだろう。 知らない男に触られている気分。 拒否できないのは・・・何故・・。
想像しながら熱くなっている自分に気が付く梨絵。 ふと顔が熱く紅潮するようで無理に後ろのドアの景色に目を向けた。

 途中の駅で満員とわかりながら強引に乗り込むサラリーマン。 そのまま押されて密着状態は最悪。
だれ?キツイ香水を付けているヤツは! 空いた手でハンカチを鼻に持っていき、
まだ半分以上乗っていなければならない状況に諦め半分馴れ半分・・・。
 あ、さっきの女の姿はどこ? 横の大きな背中でさえぎられてしまった・・・残念・・・。

 !・・・なに?・・・触られた?・・・わからない・・・。
梨絵の太腿に確かな感触。そっと撫ぜた手の平の感触。・・・じっとしていた・・・。後ろの男?横?わからない・・。
・・・!・・・やはり・・・触っている。。 ゆっくり、ゆっくり撫でている・・・。
 梨絵の今日のスタイルはタイトスカート。 ミニでも挑発するような格好でもない。
  ”コホン” ちょっと咳払い・・・様子をみる・・・。
 !・・・やはり・・・触られている・・・。熱い手の平が左太股の外側からお尻にかけて・・・動いている。
左後ろの男?・・・わからない。 少し足を動かしてみた。 それでも手は追いかける・・・。
 目が届く範囲でいやらしそうな男の姿は見えない。 後ろを向いている女性以外4人の男が何らかの形で接している。
その中の一人・・・。わからない・・・。

 その手は優しく・・・ゆっくり動き出した。 さっきの女の顔が浮んで来た。 
このままでいれば・・・あの女と同じになる。。。
 手が・・お尻のくぼみに入り込んできた。 スカートが動く。少しずつたくし上げている。
どうする・・・どうする・・・。声を上げるか・・・。上げたとしても電車はすぐには止まらない。
その手を押さえるのも勇気がいる。 いやがる時を逃してしまった・・・。いや・・・楽しみたい気持もあったのか・・・。
 自分の感情に右往左往しながら・・・早く時が流れるのを願った・・・。

 内腿に手の温もりが伝わって来た・・。
 ドキドキして息が荒くなり胸の上下も激しくなる。 押さえようとする感情が頬の色を赤くする。。
斜め前の男が何となく振り返り顔を見ている。 平気な顔をしているつもりでも、何かを感じたのだろうか・・・。
 恥ずかしさで目をそむけたが、前の男は遠慮することなく胸を覗き込み、表情を伺う様に見比べていた。
その目が気になってずっと下を向いたままだったが、指が敏感なところを刺激した時・・・ハッと息を飲んで顔を上げた。触っていないはずの男がニヤリと笑った。
 気が付いている。触られていることに気が付いている・・・。どうしたらいいのか・・・。

 指の動きが気持よさを誘っていた・・・。
こうなったら開き直り、嫁に行く体でもなし、ターゲットにされたのも・・・おばさんに見られなかったから?
 満員電車の苦痛の中で一時のお楽しみ・・・。
   あ。。。 
 パンストの上から触る3本の指の動き。。。
馴れてる・・・この指は経験者の指の動き。。中指で中心を撫でながら、人差し指と薬指が微妙にサポートする。。
かすかに開きかけた花弁の切れ目。そっと撫ぞる膨らみがピクピクと反応する。
ベールに閉ざされた入り口のくぼみが、ふつふつと湧きあがるであろう蜜の甘味を閉ざしながら。。。
 汗ばんでいるのか、濡れているのか、交じり合った湿り気が時折指の動きにブレーキをかける。
 つい・・・触り安いように片方の膝を緩めて開き気味にする・・・。

 生でない感触が、いざとなったらすぐ素に戻れる。そんな割り切りで許してしまった痴漢行為。
初めてなのに、怖がらない自分に新しい発見をし
初めてなのに、こんなに感じてしまうなんて。。
 
 触っていないはずの男の手が自分の股間の盛り上がりを気にしている。
辛うじて書類袋を前で覆っているものの、その格好は不自然な形で両手が合わされている。
なにをしている?と思うほど。。
 
 車内放送がかかる。 目的の駅だ。 ホームを確かめるようにおりる素振りを見せる。
ふいに・・・
  「ありがとう・・・」
男の声がささやいたと思ったら、その手は素早く消えた。
周りの男は・・・誰も目を合わさなかった。
梨絵がおりる姿を追うように 背中に視線を感じていた。


会社まで歩いて5分。
雨が降り始めていた。


 やっぱり降り出してしまった。
小さくため息をついて走り出した瞬間、歩道の段差でつまづいて足首に衝撃が・・。
ウッと声が出たものの歩けない痛さでもなく、そのまま会社を目指して歩き出す。
低いヒールを履いていても かかとの踏み込みに辛いものがあった。

 「大丈夫? 痛そうだね・・」
声に振り向いたその時、腕を支える手がそっと差し伸べられた。
   「あ、すみません。大丈夫です、ありがとうございます」
 「一緒に行こう。遠慮することないよ、同じ会社だから」
 
 会社が一緒? そう聞いて顔を見つめたが見覚えがない。
 「あはは、知らない顔だった? 眼中なしって事か(笑)」
   「ごめんなさい・・・失礼ですが・・・」
 「うん、気にしないでいいよ。 課が違うから知らないのが当然さ。君は美人だから目立ってたけどね」
   「隣の業務課?」
 「そうです・・・」

 5分で着くところ倍の10分かかって到着。
 「辛かったら帰らせてもらいなさいよ。 お大事にね。。」
男はそう言うと軽く手を振って業務課のドアを力強く開けて真正面を向いて入っていった。

 痛みは酷くならないまでも、踏み込む時にかばう動作が普通ではなかった。
 「おはようございます」
  「おはよ〜・・・あら、どうしたの? 足が・・・転んだの?」
 「くじいてしまって・・・すみません、ちょっと休めば治りますから・・・」

 右足をかばいながら仕事を続けていた。 席を立つときもゆっくりした動作でぎこちなかった。
そんな姿を見ていた川崎が見かねたように声をかけてきた。
 「藤堂さん、どれ見せてごらん」
   「あ、大丈夫です。すぐよくなりますから」
 「いいから・・・」
  川崎が自分の前でしゃがみこんで覗き込む。引っ込めた足をそっとつかんで靴を脱がせた。
 「これは・・・すぐ冷やさなきゃダメだよ。いらっしゃい」
   「あ、これやりかけですから・・・」
 「いいんだよあとで。治療の方が先だよ。  あー、山田君あと頼むよ」
 そう言うと、周りの目も気にせず手を支えながらロッカールームの隣にある応接室へ連れて行かれた。
社員もパートの仲間も心配げな顔はするものの、営業は出かけてほとんどいないし
自分の仕事に手一杯で 川崎に任せたと言わんばかりについてこなかった。

 「ここへ座って・・・」
 10坪弱のガランとした部屋に10人ほど座れる会議机とテーブルを挟んだ長椅子が2脚
その長椅子に座って川崎の動きを見つめる。
 一旦ドアから出たと思ったら救急箱らしきプラスチック容器を手にして後ろ手でドアをそっと閉めた。
 「さ、見せてごらん。 あ・・・ストッキング・・・脱いでね。 自分で・・・脱ぐでしょ?」
   「あ・・・はい。今脱ぎます・・・」
 川崎が後ろを向くのを確認して、椅子から立ち上がろうとした時よろめいてしまった。
「おっと・・・大丈夫? 動かないでそのままここで脱ぎなさい」
   「・・・・・」
 川崎は立ち上がって窓際へ向かった。 
その姿を見てタイトスカートをたくし上げ、ウエストに吸い付いている絹のストッキングと 柔らかな暖かい肌の間に親指を差し入れて、ラベンダー色のショーツが絡まってついてくるのを直しながらスルスルと音を立てて下げていく。
 ふと思い出した電車の中の感覚。 ストッキングの肌触り。熱くなってしまった自分。 ほんのり湿り気のあるショーツ。。
ストッキングを脱ぎ去ったあとゆがんだショーツを整えながらかすかに擦れ合う衣服の音・・・。
 当然その姿を想像する川崎の神経は、ガラスに流れる雨の雫は目にもとまらず、次のステップの為に指の準備を怠らなかった。

 「どれ・・・ここか・・・」
   「あっ・・・」
 「痛い? ここは? どう?」
ローズ色のペニュキアが塗られている清潔そうな白い足。長椅子に並んで座り、右足だけ川崎の手中に投げ出されている。
左足は床についているものの、膝が離れているため腿の内側が見え隠れする。
 軽くマッサージしながらふくらはぎまで上がってくる。
 「このあたりまで筋が張ってるな〜。ここを押さえると・・・」
   「あっ・・・いたっ・・・」
 「ごめんごめん、やっぱりこのままでは腫れてくるかもしれない」
足首を見ながら浮き上がる腿の奥に視線が移る。そのまま膝の裏側のくぼみを持ちながら膝の屈伸を診る・・。
 体勢を崩しそうになった姿を見て・・・
 「楽にしてごらん。椅子に倒れこんでいいから力抜いて。 ちゃんとほぐしておかないとあとが辛いからね」
 元スポーツトレーナーと聞いていた通り、その手つきは繊細で心地よいものだった。

 開けていた目を閉じると、その手の感覚だけ味わうことが出来た。
治療を施すというより 指の動き掌の温かさ触れるか触れないかの指の移動・・。
電車の中のあの指の動きを思い出して 痛い足よりもジワッと暖かくなる秘の箇所が妙に気になる自分がいた。

 「シップを貼っておくからね」
  「あ、はい。すみません」
お礼を言いながら少し首をもたげて覗いた足元。自分の姿勢に驚いて膝を閉じようとした。
完全に下着まで見える位置に川崎がいる。 軽く膝を立てている姿に気が付かなかった自分も油断していた。
だが、その閉じた膝を開こうとする川崎。
 「足を開かないと包帯が巻けないよ。 力抜いて・・・さ・・・言うこと聞いて。。」
  「でも・・・恥ずかしいから・・・」
 「いいんだよ。治療中に恥ずかしいも何もないだろう。仕方ないことなんだから・・・」
  「・・・・・」
 「ここの神経が・・・この膝の裏側に続いていて・・・ここに・・・」
 そう言いながら包帯を巻き終えた右手がスッと膝まで上がってくる。
 何も言葉が出ないうちに、その手は開き気味になっている腿まで上がってきた。
 「この大腿骨の内側、ここにツボがある。。。」
  「・・・・・。ツボ?」
 「そ・・・ツボ・・・」
 手の動きと共に視線が下着に移る。 何も言わず何かを探すような掌の動き。
黙って触れる指先の指圧。 その手は反対の太ももの内側にも・・・・・。
 「柔らかい・・・」

 「もう・・・もう大丈夫です。大丈夫ですから・・・」
  「・・・・・そ、楽になった? 」
 「はい、お蔭様で・・・」
  「そりゃよかった。大事にしなくちゃね・・・」
 そう言うと川崎は救急箱の中身を点検しながら身だしなみを整える梨絵に上目使いで視線を送る。
 「ありがとうございました。仕事に戻ります」
  「ああ、そうしなさい。 何かあったら・・・すぐ言うんだよ」
 「はい。失礼します」
 ゆっくり立ち上がってドアへ向かう。 救急箱を抱えたまま揺れるお尻を追う川崎・・・。


 「藤堂さん! どう?大丈夫?」
 机に戻った途端 離れた場所から小さな声がかかった。
   「ええ、何とか大丈夫。シップもしてくださったし」
 「・・・・・川崎さんでしょ?・・・・・なにも・・・なかった?」
   「なにも?・・・・・」
 その言葉が梨絵の不安をかきたてた。 あの視線や手の動きが気になったものの・・・。
 「何もっていうのは・・・・・あは・・・・・何もよ。 マッサージしてもらったのよね?」
   「ええ、少しですけど・・・」
 「ふーん・・・。手馴れてるもんね川崎さん。 で?気持ちよかった?」
   「・・・・・どういうことですか?」

 何を聞き出そうとしているのか・・・。その時川崎が会議室から戻ってきた。
「佐田君。ちょっと・・・・・」
   「・・・・・はい・・・・・」
 何か言いたそうな視線を残しながら、今しゃべっていた佐田が川崎について会議室へ入っていった・・・。

シップのお蔭で歩くのも楽になったころ、お手洗いへ。 そこにいたのは佐田。 まだ梨絵に気が付いていない。
ブラウスから無造作に覗いていたブラジャーの肩紐を直し、乳房の膨らみに何か付いているのだろうか
鏡を見ながらしきりに気にしている。 ブラウスのボタンを閉じながら頭を動かしたとき
 「あ、いやっだ!そこにいるならいるって言ってよ! びっくりするじゃない」
   「ごめんなさい。入ってきたらいらしたから、ただ黙っていただけです・・・」
 「そ。  はぁ〜・・・。ったく・・・・」
 ため息をつく佐田の後ろを通りながらトイレのドアを閉める。
 あれは・・・色事をしてきたあとなんだろう・・・そんな感がしていた・・・。

雨は・・・止んだ。。
帰りの電車の時間まで30分。足をかばいながらゆっくり歩き出したとき。前方のカフェレストランの看板横
見慣れた横顔が目に入った。 あの人は  今朝の。。。

看板の近くに来た時その目は自分に向けられた。 思わず足を止めてたたずんでいると
 「やあ、会えるときは会えるもんだね。 どう?足の具合は」
  「やっぱり。 今朝はありがとうございました。 お蔭で終了時間まで持ちこたえました」
 「そりゃ良かった。しかし、その様子だとまだ痛そうだけど・・・。よかったら一緒に電車乗ろうか?」
  「でも・・・。何かしてらしたんじゃないの?今・・」
 「いや。小腹が減っていたから寄ろうかどうか迷ってたんだよ。 なんなら一緒に・・・寄ってく?」
  「・・・・・。時間はありますけど・・・」
 「じゃ、入ろう」

 気負うこともなく自然に肩を支えて足を気にしながら誘導してくれた。その優しさがたまらない快感であった。
彼はベジタブルサンドイッチとトマトジュースを頼んで照れくさそうに笑った。
 「僕ね独り者だから野菜が不足してるんだよ」
  「え。お一人なんですか。お住まいも?」
 「そう 単身赴任中だよ。誰に気遣うこともなく・・・身軽だから時間も自由。
 しかし・・・今日転勤が決まってね。1週間後南へ行くんだよ。 折角君と話が出来るころになって・・・転勤・・・」
  「え、転勤?そうでしたか・・・。折角・・・」
 「僕ね・・・君の事ずっと見てたんだよ。知らなかったでしょ」
  「・・・・・ずっと?」
 「ずっと・・・朝も・・・夕方も」
  「いつから?何処で?」
 「あはは・・・嘘だよ。知ってはいたけど、ストーカーみたいなことはしていないよ。あははは」 
何だか狐につままれたような話ではぐらかされてしまったが、少なからず見つめる目が好意を持っていてくれると感じた。
 
 1本遅らせた電車の中。1席空いているところへ梨絵が座りその目の前に彼が立つ。
片手でつり革を持ちながら片方の手に書類カバン。時々視線を合わせながら微笑んで。話すでもなく電車の揺れに身を任す。一駅 二駅・・・人がまばらになったころ梨絵の隣にやっと座れた。
 「今度ゆっくり食事したいな〜」
  「私と?」
 「そう、君と。。。ワインでも飲みながら。。。」
  「こんな主婦を誘って頂けるなんて・・・奇特な方ですね。。」
 「1週間以内・・・に」
  「・・・考えておきます・・・」
 「うん。 じゃお先に・・・おやすみ」
梨絵より2つ近い駅。 軽く手をふりながら大きな背中が階段を登っていく・・・。

 1週間以内のディナーのお誘い。 同じ会社とはいえ全く素性の知れない相手。
快く承諾してもよいものかどうか・・・でも考えている時間が・・・。
 そんなことを思いながら朝のいつもの満員電車。 身動き取れない状態から思い出されるあの時の手。
あの時感じた自分の心理。 隙があったのだろうか・・・狙われやすいのだろうか・・・。
 あの感覚が忘れられないのは拒否していない証拠なのだろうか・・。
 周りの男たちを眺めながら軽くため息をついたとき、それは始まった。

 初めてではないその感触。タイトスカートの後ろのファスナー。上着の下へ掌が入ってくる。
 ”来た”そう思った時人の目が気になった。見られない位置にあるか確かめている自分がいる。
 ドア近くで中央を向いている自分と手の主はドア横の壁にもたれながら背中付近にいる。他の客は外を見たり窮屈な姿勢のまま小さく折りたたんだ新聞を見つめていたり・・。 自分がされていることを見られる位置ではないと確信する。 それは同時に手の主にも察せられる余裕の位置である。 

 ゆっくり後ろファスナーが下ろされて 警戒しながらその手は小さく身震いしたように進入してくる。
 真後ろでは入りにくかったのだろうか、声のない咳払いをしながら体をよじらせ右手が入りやすい体勢に左へずれた。その時左側にいた背の高い男が手の主を睨んだように見えたが、それはその行為を怪しんだのではなく、窮屈な体勢であるにもかかわらず自分の方にずれて行ったことへの不快感で一層顔をそむけ、この行為を見逃すこととなっていた。

 じっとしている女。極力腕を動かさず手首から先だけを器用に使って腰のブラウスをたくし上げ、ストッキングの感触を味わいながら、男の鼻息がもれて耳の辺りに熱い鼓動を感じている。
 お尻の割れ目から徐々に伝って降りていく個々の意識を持った5本の指。
 軽く触れる なぞる 押す つつく つまむ。。。全ての指が連動された道具のように。熱くあつく・・・アツク・・・。
 
 軽く目を閉じる 顎が傾く 頬が染まる 眉間に皺がよる 腿に力が入る 。。。。。濡れる。。。濡れている。。。
 行為を好んでいるのではないが、嫌がらない体。何も感じない振りをしながら高ぶる鼓動。
 とんでもないことをされている・・・と思いながら、受け入れる体・・・。

 心の葛藤はなくなっている。むしろ行為を楽しんでいる。男もそれを承知している。これ幸いと・・・。
 男のモノが左の腰辺りに感じている。熱く固くなったものを押し付けている。押したまま強弱をつけている。
 指の動きが荒くなっている。 熱く濡れて盛り上がった花弁を確かめるように 全体をおおった掌が熱を吸収していく。。

 目的地・・・降りなければ・・・。 ファスナーを直し意識を現実に戻さなければ。
 そう思いつつ雑踏に紛れながら上着の後ろを手で確かめる。
 「おはよ!」
 不意にかけられた声に驚いて見上げる。
 「あれ?そんなビックリした? 僕はわかってたよ、君が乗ってるの」
  「え!この電車に乗っていたの?」
 「ああ。乗ってたよ。じっと君を見てたよ。。。」
  「見てた・・・の?」
 「ああ・・・見てたさ。。」
  「・・・・・。何を?」
 「だから・・・君をさ・・・。何故?見てちゃいけなかった?」
  「いえ・・・。見られてたなんて・・・思わなかったから」
 「朝から艶っぽい人だな〜って思ったよ。眠そうにも見えた(笑)」
  「そ、そうよ。眠かったわ。目を開けていられなかったから・・・」
 「・・・・・そうらしいね・・・・・」

 半信半疑な会話だったが、あのことまでは知らないだろうと・・・。
 
 「さ、今日もしっかりお仕事しましょう!」
  「そうね。お仕事してこそ遊びも楽しくなるものね」
 「そう。遊び方にも工夫しながらね。・・・・・・・また・・・・・ね」

 !!・・・・・見られた? 知ってる? 考えすぎ?

 その2日後、降り立とうとしたホームが賑やかしい。 大声の男性を2〜3人の駅員が取り囲んでいる。
 時間を気にしながら何事かと騒動の輪の中に目を向けた。
 「痴漢だって。いや〜ね〜。捕まってよかったわ〜〜」 そんな声が飛び交っている。
 
 !!・・・・・その顔は・・・・・その犯人の正体は!

 ”いや!いやよ! そんな馬鹿な・・・。 私を触ったのも・・・彼? そんな馬鹿な・・・”

 ”そ。遊びには危険も伴う・・。覚悟の上で遊ばなきゃね”
 彼が言ったそんな言葉が蘇ってきた。

 犯罪行為と知りながら受け入れてしまった事への罪悪。
 受け入れてしまったゆえに、止められなかった彼の心理。
 1度ならず2度までも・・・。

 
通勤電車の一こま。
満員電車の死角。
出せない声。
出させない威圧感。

振り切れますか?
守れますか?
勇気を出せますか?


PS:
学生時代、名鉄電車から急いで降りる瞬間手を入れられたな〜。声を出す暇もなかった(笑)
20歳過ぎ、乗車する時後ろからスカートの上から腿をカミソリのような物で切られたことがある。”チカッ!”としてわかったのだが、やはり声が出せなかった。
犯人らしきヤツはズボンのポケットにタオル握り締めて突っ込んでいたが、その目に睨まれて声が出なかった。
今の私なら堂々と叫んでやるのに(笑)


長らく中断したまま完結できなかった”人妻パート通勤電車物語”
このあたりでキリを付けさせて頂いて。。。
次のお楽しみに入りたいと思っております。。。

予告?(笑)

。。。。。ネット不倫の現場から。。。。。

なんてどうかしら。

興味あるでしょ?(爆)     

PSのPS
 思ったとおり、「え、ここで終わっちゃうの?」 「慌てて終われせたね」 「無理やり終わってる(笑)」
という指摘がございました(爆)
 我ながら、ずるずると長引いてしまったことと、痴漢の想像性に欠け、素人だからここら辺で堪忍してちょ。。という甘えが出てしまったこと・・・お許しください<m(__)m>

 次回は・・・リキ入れます! (*^。^*)(笑)
                                              第五話 完
                                                                      

 トップページへ戻る  第一話  第二話  第三話  第四話  第五話

第六話